院外心停止後の動脈血二酸化炭素分圧における軽度高値と正常値との比較
Mild Hypercapnia or Normocapnia after Out-of-Hospital Cardiac Arrest
G. Eastwood and Others
ガイドラインでは,院外心停止後に蘇生された昏睡状態の成人の動脈血二酸化炭素分圧は,正常値を目標とすることを推奨している.しかし,軽度高値は脳血流を増加させることから,神経学的転帰を改善する可能性がある.
心原性と推定される院外心停止,または原因不明の院外心停止後に蘇生され,集中治療室(ICU)に入室した昏睡状態の成人を,24 時間の動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)軽度高値を目標とする群(目標値 50~55 mmHg)と,PaCO2 正常値を目標とする群(目標値 35~45 mmHg)に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要転帰は良好な神経学的転帰とし,拡張グラスゴー転帰尺度(1 [死亡]~8 で,数値が高いほど神経学的転帰が良好であることを示す)のスコアが 5(中等度の障害の「下」を示す)以上と定義し,6 ヵ月の時点で評価した.副次的転帰は,6 ヵ月以内の死亡などとした.
17 ヵ国,63 ICU で 1,700 例が登録され,847 例が PaCO2 軽度高値目標群,853 例が PaCO2 正常値目標群に割り付けられた.6 ヵ月の時点での良好な神経学的転帰は,軽度高値群では 764 例中 332 例(43.5%),正常値群では 784 例中 350 例(44.6%)に認められた(相対リスク 0.98,95%信頼区間 [CI] 0.87~1.11,P=0.76).無作為化後 6 ヵ月以内の死亡は,軽度高値群では 816 例中 393 例(48.2%),正常値群では 832 例中 382 例(45.9%)に発生した(相対リスク 1.05,95% CI 0.94~1.16).有害事象の発現率に群間で有意差は認められなかった.
院外心停止後に蘇生された昏睡患者において,PaCO2 軽度高値を目標としても,PaCO2 正常値を目標とした場合と比較して,6 ヵ月の時点での神経学的転帰は改善しなかった.(オーストラリア国立保健医療研究評議会ほかから研究助成を受けた.TAME 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03114033)