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July 6, 2023 Vol. 389 No. 1

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慢性リンパ性白血病患者に対する共有結合型 BTK 阻害薬投与後のピルトブルチニブ
Pirtobrutinib after a Covalent BTK Inhibitor in Chronic Lymphocytic Leukemia

A.R. Mato and Others

背景

慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)患者では,共有結合型のブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬による治療が無効であった場合の転帰は不良であるため,新たな治療選択肢が必要である.ピルトブルチニブ(pirtobrutinib)は,BTK 阻害機構を再構築するようデザインされた,選択性の高い非共有結合型(可逆的)BTK 阻害薬である.

方 法

再発または難治性の B 細胞癌患者にピルトブルチニブを投与する第 1・2 相試験を行った.今回は,BTK 阻害薬による治療歴のある CLL/SLL 患者における有効性の結果と,すべての CLL/SLL 患者における安全性の結果を報告する.主要エンドポイントは,独立判定委員会が評価した全奏効(部分奏効以上)とした.副次的エンドポイントは,無増悪生存期間,安全性などとした.

結 果

CLL/SLL 患者 317 例がピルトブルチニブの投与を受け,このうち 247 例に BTK 阻害薬による治療歴があった.この 247 例における前治療数の中央値は 3(範囲 1~11)であり,100 例(40.5%)は,ベネトクラクスなどの B 細胞リンパ腫 2(BCL2)阻害薬の投与も受けていた.ピルトブルチニブに対する全奏効割合は 73.3%(95%信頼区間 [CI] 67.3~78.7)であり,リンパ球増加を伴う部分奏効を含めると 82.2%(95% CI 76.8~86.7)であった.無増悪生存期間中央値は 19.6 ヵ月(95% CI 16.9~22.1)であった.ピルトブルチニブの投与を受けた 317 例すべてにおいて,とくに頻度の高かった有害事象は,感染(患者の 71.0%),出血(42.6%),好中球減少(32.5%)であった.治療期間中央値 16.5 ヵ月(範囲 0.2~39.9)の時点で,BTK 阻害薬に関連することの多い有害事象のうち,高血圧(患者の 14.2%),心房細動または心房粗動(3.8%),大出血(2.2%)の発現頻度は比較的低かった.治療関連有害事象のためにピルトブルチニブの投与を中止したのは 317 例中 9 例(2.8%)のみであった.

結 論

この試験では,複数の前治療歴を有し,共有結合型 BTK 阻害薬による治療歴のある CLL/SLL 患者において,ピルトブルチニブは有効性を示した.有害事象は,感染,出血,好中球減少の頻度がとくに高かった.(ロキソ オンコロジー社から研究助成を受けた.BRUIN 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03740529)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 33 - 44. )