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August 10, 2023 Vol. 389 No. 6

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DOCK11 欠乏における全身性炎症と正球性貧血
Systemic Inflammation and Normocytic Anemia in DOCK11 Deficiency

J. Block and Others

背景

アクチン制御蛋白に影響を及ぼす遺伝的異常と,重度の自己免疫疾患,自己炎症性疾患との関連を示すエビデンスが増加しているが,その背景にある分子機構は十分に解明されていない.「細胞質分裂貢献因子 11(dedicator of cytokinesis 11:DOCK11)」は,低分子量 Rho グアノシントリホスファターゼ(GTPase)である「細胞分裂周期 42(cell division cycle 42:CDC42)」を活性化する.CDC42 は,アクチン細胞骨格動態の中心的な制御因子である.DOCK11 のヒトの免疫細胞機能および疾患における役割は明らかにされていない.

方 法

感染症,早期発症の重度の免疫調節異常,赤血球の大小不同・奇形を伴うさまざまな重症度の正球性貧血,発達遅延で受診した,異なる 4 家系の 4 例に,遺伝学的,免疫学的,分子的アッセイを行った.機能的アッセイを,患者由来細胞のほか,マウスモデル,ゼブラフィッシュモデルでも行った.

結 果

患者の DOCK11 にまれな X 連鎖生殖細胞変異を同定した.これらの変異によって,2 例では蛋白発現が喪失し,4 例すべてで CDC42 の活性化が障害された.患者由来 T 細胞は糸状仮足を形成せず,異常な遊走を示した.さらに,患者由来 T 細胞のほか,Dock11 ノックアウトマウス由来の T 細胞においても,活性化 T 細胞核内因子 1(NFATc1)の核移行亢進と関連する,明確な活性化と炎症性サイトカイン産生が認められた.新たに作製した dock11 ノックアウトゼブラフィッシュモデルでは,貧血と,異常赤血球の形態学的特徴が再現された.貧血は,恒常的に活性化した CDC42 を異所性発現させることで改善しえた.

結 論

アクチン制御因子 DOCK11 に影響を及ぼす生殖細胞の半接合性機能喪失型変異は,重度の免疫調節異常および全身性炎症,反復性感染症,貧血を特徴とする,これまで知られていなかった先天性の造血異常と免疫異常を引き起こすことが示された.(欧州研究会議ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 527 - 39. )