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August 31, 2023 Vol. 389 No. 9

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上咽頭癌のマススクリーニングに用いる抗エプスタイン・バーウイルス BNLF2b 抗体
Anti–Epstein–Barr Virus BNLF2b for Mass Screening for Nasopharyngeal Cancer

T. Li and Others

背景

エプスタイン・バーウイルス(EBV)の DNA または抗体を保有する無症状者の集団スクリーニングにより,上咽頭癌の診断や患者の生存は向上している.しかし,現在のスクリーニング戦略の陽性適中率は,上咽頭癌の流行地域においてさえ不十分である.

方 法

EBV のコード領域の配列で上位の B 細胞エピトープを代表とするペプチドライブラリーを,上咽頭癌の新規血清バイオマーカーを同定する目的で設計した.後ろ向き症例対照研究にて新規バイオマーカーを探索し,同定された抗 BNLF2b トータル抗体(P85-Ab)の精度の妥当性を検証するため,大規模前向きスクリーニングプログラムを実施し,2 つの抗体(EBV 核抗原 1 [EBNA1]–IgA と,EBV 特異的ウイルスカプシド抗原 [VCA]–IgA)に基づく標準的なスクリーニング法の精度と比較した.

結 果

後ろ向き症例対照研究では,P85-Ab は感度が高く(94.4%,95%信頼区間 [CI] 86.4~97.8),特異度も高く(99.6%,95% CI 97.8~99.9),上咽頭癌スクリーニングのもっとも有望なバイオマーカーであった.前向きコホートの参加者で適格であった 24,852 例において,上咽頭癌は 47 症例(早期 38 症例)同定された.P85-Ab は,2 抗体法よりも感度が高く(97.9% 対 72.3%,比 1.4 [95% CI 1.1~1.6]),特異度も高く(98.3% 対 97.0%,比 1.01 [95% CI 1.01~1.02]),陽性適中率も高かった(10.0% 対 4.3%,比 2.3 [95% CI 1.8~2.8]).P85-Ab と 2 抗体法を組み合わせると,陽性適中率は著しく上昇して 44.6%(95% CI 33.8~55.9)となり,感度は 70.2%(95% CI 56.0~81.4)であった.

結 論

今回の結果は,P85-Ab は標準的な 2 抗体法に比べて感度,特異度,陽性適中率が高く,上咽頭癌スクリーニングの有望な新規バイオマーカーであることを示唆している.(中国国家重点研究開発計画ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04085900)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 808 - 19. )