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September 7, 2023 Vol. 389 No. 10

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再発 T 細胞急性リンパ性白血病に対する塩基編集した CAR7 T 細胞
Base-Edited CAR7 T Cells for Relapsed T-Cell Acute Lymphoblastic Leukemia

R. Chiesa and Others

背景

クラスター化された,規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)によって誘導されるシチジンの脱アミノ化は,DNA に切断を生じさせることなく,あるヌクレオチドの別のヌクレオチドへの非常に正確な変換 ― 具体的にはシトシンからチミンへの変換 ― をもたらす.そのため,塩基編集を可能にし,転座やその他の染色体異常を誘発することなく,遺伝子を不活性化することができる.再発小児 T 細胞白血病患者に対するこの技術の使用が現在研究されている.

方 法

塩基編集を用いて,誰に対しても,すぐに使える(オフ・ザ・シェルフ)キメラ抗原受容体(CAR)T 細胞を作製した.健常ボランティアドナーの T 細胞に,T 細胞急性リンパ性白血病(ALL)で発現する蛋白の CD7 に特異的な CAR(CAR7)を,レンチウイルスで形質導入して発現させた.次に,塩基編集を用いて,リンパ球除去血清療法,CAR7 T 細胞の同士討ち(fratricide),移植片対宿主病を回避するため,それぞれ,CD52 受容体,CD7 受容体,αβ T 細胞受容体のβ鎖をコードする 3 つの遺伝子を不活性化した.これらの編集された細胞の安全性を,再発白血病の患児 3 例において検討した.

結 果

1 例目は,同種幹細胞移植後に T 細胞 ALL が再発していた 13 歳の女児で,塩基編集した CAR7(BE-CAR7)の単回注入後 28 日以内に分子的寛解が得られた.患児はその後,元のドナーから強度減弱(骨髄非破壊的)前処置による同種幹細胞移植を受け,免疫学的再構築に成功し,白血病の寛解は持続した.同じバンクの BE-CAR7 細胞は,ほかの 2 例においても強力な活性を示し,1 例は致死的な真菌感染合併症を発症したものの,もう 1 例は寛解中に同種幹細胞移植を受けた.重篤な有害事象として,サイトカイン放出症候群,多系統の血球減少,日和見感染などがあった.

結 論

この第 1 相試験の中間結果は,再発白血病患者に対する塩基編集した T 細胞のさらなる研究を支持し,免疫療法に関連する合併症の予想されるリスクを示している.(英国医学研究評議会ほかから研究助成を受けた.ISRCTN 登録番号 ISRCTN15323014)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 899 - 910. )