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September 14, 2023 Vol. 389 No. 11

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鉄欠乏を伴う心不全に対するカルボキシマルトース第二鉄
Ferric Carboxymaltose in Heart Failure with Iron Deficiency

R.J. Mentz and Others

背景

カルボキシマルトース第二鉄治療は,駆出率低下と鉄欠乏を伴う心不全患者の症状を軽減し,QOL を改善する.カルボキシマルトース第二鉄が臨床イベントに及ぼす影響については,さらなるエビデンスが必要である.

方 法

二重盲検無作為化試験で,左室駆出率 40%以下で,鉄欠乏を伴う心不全の外来患者を,心不全の標準治療に加えて,カルボキシマルトース第二鉄を静脈内投与する群と,プラセボを投与する群に 1:1 の割合で割り付けた.カルボキシマルトース第二鉄またはプラセボは,鉄関連指標とヘモグロビン値に基づき,必要に応じて 6 ヵ月ごとに投与した.主要転帰は,無作為化後 12 ヵ月以内の死亡,無作為化後 12 ヵ月以内の心不全による入院,6 分間歩行距離のベースラインから 6 ヵ月目までの変化量から成る,階層的複合転帰とした.有意水準は 0.01 に設定した.

結 果

3,065 例が登録され,1,532 例がカルボキシマルトース第二鉄群,1,533 例がプラセボ群に無作為に割り付けられた.12 ヵ月以内の死亡は,カルボキシマルトース第二鉄群では 131 例(8.6%),プラセボ群では 158 例(10.3%)に発生し,12 ヵ月以内の心不全による入院は,それぞれ 297 例,332 例に発生し,6 分間歩行距離のベースラインから 6 ヵ月目までの変化量の平均(±SD)は,それぞれ 8±60 m,4±59 m であった(Wilcoxon–Mann–Whitney 検定の P=0.02,マッチングさせない win 比 1.10,99%信頼区間 0.99~1.23).カルボキシマルトース第二鉄の反復投与は安全と考えられ,有害事象プロファイルは大部分の患者で忍容可能なものであった.投与期間中に重篤な有害事象が発現した患者数は,2 群で同程度であった(カルボキシマルトース第二鉄群 413 例 [27.0%],プラセボ群 401 例 [26.2%]).

結 論

駆出率低下と鉄欠乏を伴う心不全の外来患者において,カルボキシマルトース第二鉄を投与した場合とプラセボを投与した場合とで,死亡,心不全による入院,6 分間歩行距離から成る階層的複合転帰に明らかな差は認められなかった.(アメリカン・リージェント社 [第一三共社の子会社] から研究助成を受けた.HEARTFID 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03037931)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 975 - 86. )