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This Week at NEJM.org
NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.
September 19, 2002
Vol. 347 No. 12
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エンドトキシンへの環境曝露と喘息との関係
Environmental Exposure to Endotoxin and Its Relation to Asthma喘息の児童は,疾患に対する遺伝的素因と遺伝的因子を修飾する環境曝露の両方を有する.農場に住む学童は,家が農家ではない学童に比べて喘息を患う可能性が小さいことは知られている.オーストリア,ドイツ,スイスの農家と農家でない家両方のある地域の児童を対象としたこの研究では,研究者は,児童が寝ていたマットレスから採取したほこりより測定したエンドトキシンへの曝露濃度と喘息およびそれに関連する状態の有病率とを関連付けた.エンドトキシンへの曝露が大きいほど,児童が喘息をもつ可能性は小さかった.
これらの知見では,先天免疫反応を活性化するエンドトキシンへの曝露が喘息発現における重要な調節機能をもつように考えられることを示唆している.この研究では,環境におけるこの防御因子の同定に対する研究に焦点をおいており,この因子の欠如が現在の喘息流行の原因であるかもしれ ない. -
失神
Syncopeフラミンガム心臓研究に参加し,平均 17 年追跡された参加者 7,814 人のうち,822 人に少なくとも 1 回の失神のエピソードがみられ,失神の第一報告の発生率は,1,000 人-年当り 6.2 であった.血管迷走神経性および心臓性の原因がもっとも多く,症例の 1/3 以上については原因が同定されなかった.死亡率は,失神のなかった参加者と比較した場合,失神のあった参加者全員,原因不明の失神のあった参加者,またとくに心臓性失神のあった参加者で増加した.血管迷走神経性失神は,予後良好であった.
地域ベースの人口集団では,血管迷走神経性イベントや他の明確な良性の原因によるものではない失神は,死亡リスクの増加に対する指標である. -
乳癌の危険因子である乳房 X 線撮影像上の密度の遺伝率
Heritability of Mammographic Density, a Risk Factor for Breast Cancer乳房 X 線撮影像は,脂肪が存在するために暗くなる場合や,放射線学的に高密度の結合組織や上皮組織のために明るくなる場合がある.X 線像における高密度領域の全割合は,乳房 X 線撮影像上の密度の指標である.先行研究では,乳房 X 線撮影の高密度パターンは,乳癌リスクの増加と関連していることが示されている.一卵性双生児 571 組と二卵性双生児 380 組を対象としたこの研究により,乳房 X 線撮影像上の密度の遺伝率が高いことが明らかとなった.
乳癌感受性において,遺伝要因が重要な役割を果していることはほぼ確実であるが,BRCA1 と BRCA2 の突然変異を除いて,感受性対立遺伝子と考えられるものについてはほとんどわかっていない.双生児を対象としたこの大規模研究は,乳房の構成それ自体の中に重要な手がかりが潜んでいることを指摘している. -
ベトナムにおける感染に関連した急性腎不全に対する血液濾過と腹膜透析
Hemofiltration and Peritoneal Dialysis in Infection-Associated Acute Renal Failure in Vietnam発展途上国では,感染に関連した急性腎不全には,高い有病率と死亡率が伴う.このベトナムの非盲検無作為試験は,急性腎不全患者(熱帯熱マラリアまたは敗血症による)に対して広く利用されている腹膜透析と,血液濾過とを比較した.血液濾過群では,アシドーシスの消退と血清クレアチニン濃度の低下が 2 倍以上早く認められ,血液浄化療法が必要な期間はより短かった.血液濾過群では生存率が改善された.
感染に関連した急性腎不全に対しては,血液濾過のほうが腹膜透析よりも優れている. -
最近の概念:耳鳴
Current Concepts: Tinnitus耳鳴は加齢と深い関係があり,一般的だがほとんど理解されていない疾患である.この論文は,自覚的耳鳴と他覚的耳鳴の鑑別方法を説明している.耳鳴には聴力損失が関連していることが多いが,多くの場合その起源は中枢性である可能性がある.この慢性疾患の管理においては,治療の多様な選択肢が有用であろう.
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疾患のメカニズム:感染症が自己免疫疾患およびアレルギー性疾患への感受性に及ぼす影響
Mechanisms of Disease: Effect of Infectious Diseases on Susceptibility to Autoimmune and Allergic Diseases衛生仮説によれば,感染症の発生率が高い環境が,アレルギー性疾患および自己免疫疾患を防ぎ,一方,清潔な環境は,これらの疾患の発生率を増加させると仮定されている.この論文は,衛生仮説を裏付ける証拠を検討し,衛生状態とアレルギー性疾患および自己免疫疾患への感受性との関係を説明できる多数の機序を示している.
衛生仮説を支持する実験的および疫学的知見の増大は,とくにワクチン接種に関する政策および小児期の抗菌薬の使用に関して,重要な臨床的意義がある. -
Clinical Implications of Basic Research:喘息遺伝子としての ADAM-33 表面
Clinical Implications of Basic Research: ADAM-33 Surfaces as an Asthma Gene最近の研究で ADAM-33 が喘息遺伝子として同定された.ADAM はメタロプロテナーゼのサブファミリーであり,元来,細胞表面上の蛋白として同定されていた.これは 2 つの機能的ドメインであるディスインテグリンとメタロプロテナーゼドメイン(頭文字を取って ADAM と記す)をもつ.著者らは,ADAM-33 の過剰あるいは欠乏が喘息の表現型を発現する原因になりうる経路について推測している.
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Sounding Board:ヘルスケアにおける新戦略を模索する大規模雇用主
Sounding Board: Large Employers Seeking New Strategies in Health Care大雇用者は健康保険の主要な購入者であり,従業員の健康を維持し,医療費を抑制することに強い関心を示している.これらの試みでは,従業員により安価で質の高いケアを選択させるため,従業員に経済的インセンティブと質についてのデータを与えることに焦点を当てている.数社の大雇用者は,従業員をより質の高いケアに導くことを目的として,病院の質についての情報を収集し配布するグループを結成した.