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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

March 25, 2004
Vol. 350 No. 13

ORIGINAL ARTICLE

  • 進行性リンパ腫に対する大量化学療法と幹細胞支持療法
    High-Dose Chemotherapy and Stem-Cell Support in Aggressive Lymphoma

    進行性リンパ腫に対する大量化学療法と幹細胞支持療法

    この試験では,60 歳以下の進行性リンパ腫患者に対する治療として,シクロホスファミド,ドキソルビシン,ビンクリスチン,プレドニゾンを用いた標準的治療法(CHOP)を,自己造血幹細胞移植+大量化学療法による初期治療コースと比較した.大量化学療法は,死亡リスクが中等度~高度の患者に対し,CHOP 療法よりも優れていた.
    この試験の結果には説得力があるが,最終的には,B 細胞リンパ腫に対する新しい標準的治療になりつつある CHOP+リツキシマブ併用療法の結果と比較する必要があるであろう.

  • 致死的なサーファクタント欠乏に関与する遺伝子
    Gene Implicated in Fatal Surfactant Deficiency

    この研究は,新生児の致死的なサーファクタント欠乏症例における,遺伝子要因について報告している.ABCA3 は ATP 結合カセット輸送蛋白 A3 をコードする遺伝子で,患者 21 例から採取したサンプルの 76%で変異していた.そのような変異を有する患者では,サーファクタントが蓄えられている細胞小器官,すなわち層板小体に異常がみられた.
    この研究から,ABCA3 変異歴がある家族は,遺伝カウンセリングや出生前あるいは着床前に遺伝子型を特定することによって,利益が得られる可能性があることが示唆される.

  • 早産児の肺疾患に対する生後デキサメタゾン療法後の学齢期における転帰
    Outcomes at School Age after Postnatal Dexamethasone Therapy for Lung Disease of Prematurity

    先行するプラセボ対照試験では,呼吸窮迫症候群の治療薬として新生児にデキサメタゾンを投与した.その試験に参加した小児がおよそ 8 歳になった時点で,研究者らは第二の研究を行い,治療の長期的影響を検討した.デキサメタゾン群の小児は対照群の小児に比べ,身長が低く,頭囲も小さく,複数の認知・運動機能検査の成績も低かった.
    デキサメタゾン療法には長期に及ぶ有害作用があるため,新生児の呼吸窮迫症候群の治療を目的として,生後に用いることは支持されない.

BRIEF REPORT

  • 2 種類のクロライドチャネルの突然変異による塩類喪失と難聴
    Salt Wasting and Deafness Resulting from Mutations in Two Chloride Channels

    バーター症候群は,クロライドトランスポーターをコードする遺伝子の突然変異が原因である.BSND は,2 種類のクロライドトランスポーターの膜への組み込みを調節する蛋白,バーチンをコードする遺伝子であるが,この遺伝子が突然変異した胎児では,塩類喪失と難聴を伴う状態が出生前にみられる.この報告では,症候群を呈するが BSND 遺伝子は正常な小児について報告している.小児には,クロライドトランスポーター ClC-Ka および ClC-Kb をコードする 2 つの遺伝子それぞれに突然変異があった.このデータは,バーチンが ClC 型のクロライドチャネルを調節することの強力な証拠を示しており,腎臓の塩分調節に関する新たな洞察を与えるものである.

CLINICAL PRACTICE

  • 肥大型心筋症
    Hypertrophic Cardiomyopathy

    28 歳の男性が,2 年間にわたり,激しい労作時に呼吸困難が増悪するため受診した.心室中隔厚は 23 mm,左室流出路圧較差は 80 mmHg で,男性は肥大型心筋症であることが判明した.肥大型心筋症や突然死の家族歴はない.48 時間ホルター心電図では,まれに心室性期外収縮が認められる.この患者をどのように治療すべきであろうか?

MECHANISMS OF DISEASE

  • EB ウイルスの持続感染と関連するリンパ腫の原因
    Persistence of the Epstein-Barr Virus and the Origins of Associated Lymphomas

    EB ウイルスの持続感染と関連するリンパ腫の原因

    エプスタイン・バーウイルス(EBV)のライフサイクルに関するこの総説では,EBV に対する防御免疫をもつ宿主において,EBV が生涯にわたる感染をどのように確立するかについて述べている.著者らはまた,移植後のリンパ腫,ホジキン病,バーキットリンパ腫の発現における EBV の役割についても述べている.

SPECIAL REPORT

  • ヒト胚盤胞に由来する胚幹細胞株
    Embryonic Stem-Cell Lines from Human Blastocysts

    ヒト胚盤胞に由来する胚幹細胞株

    この報告は,本誌に先駆け 2004 年 3 月 3 日にインターネットで発表されたもので,胚盤胞の内部細胞塊からヒト胚幹細胞株を 17 株樹立させるのに用いられた方法について論じている.研究者は,遺伝資源移転契約(Material Transfer Agreement)のもとでこれらの細胞株を利用することができるが,現行の規制下では,連邦政府から資金援助を受けている研究では使用することができない.これらの細胞によって,多様な重度慢性疾患に関する研究が促進されるものと期待されている.