- 目 次
-
This Week at NEJM.org
NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.
December 30, 2004
Vol. 351 No. 27
This Week in the JOURNAL
ORIGINAL ARTICLES
-
血管手術前の冠動脈血行再建
Coronary Revascularization before Vascular Surgery冠動脈疾患と末梢血管疾患は併発することが多い.冠動脈疾患の状態が不安定な患者は,血管手術前の冠動脈血行再建により利益を受けるが,冠動脈疾患が安定している患者の場合,状況はさほど明らかでない.この無作為試験では,冠動脈疾患が安定している患者で,腹部大動脈瘤または脚部の血管疾患の治療を目的とした待機的手術を受けた患者では,術前の冠動脈血行再建による利益は認められなかった.したがって,予防的な血行再建術は,よりリスクの高い患者にのみ行うべきである.
-
抗 VEGF 療法と加齢黄斑変性
Anti-VEGF Therapy and Age-Related Macular Degeneration加齢黄斑変性は,失明の大きな原因となっている.この研究では,血管内皮増殖因子(VEGF)受容体を阻害する薬剤(ペガプタニブ)の眼内注入により,加齢黄斑変性による視力低下の進行が抑えられた.注入を受けた患者の一部で眼内炎が発生した.ペガプタニブ治療の長期の安全性と有効性は明らかではないが,これらの結果は,加齢黄斑変性の治療において,ペガプタニブを長期的に研究することの必要性を示している.
-
タモキシフェンで治療したリンパ節転移陰性乳癌における再発予測のための多重遺伝子解析
Multigene Assay to Predict Recurrence of Tamoxifen-Treated, Node-Negative Breast Cancerリンパ節転移陰性のエストロゲン受容体陽性乳癌の女性を対象に行われた,21 個の遺伝子に関する,パラフィン包埋標本のポリメラーゼ連鎖反応の解析結果を,遠隔再発リスクのスコア算出の基準とした.再発スコアが低い女性と高い女性のあいだで,リスクの差は有意であった.また,再発スコアから全生存率が予測された.
再発スコアから,個々の乳癌患者の遠隔再発リスクを推定することができる.
BRIEF REPORT
-
CYP2D6 による超迅速代謝に関連したコデイン中毒
Codeine Intoxication Associated with Ultrarapid CYP2D6 Metabolism著者らは,中等量のコデインを投与されただけにもかかわらず,生命を脅かすオピオイド中毒を発症した患者について報告している.患者のモルヒネおよびモルヒネ-6-グルクロニドの血中濃度は上昇していた.CYP2D6 の遺伝子型を特定したところ,3 種類以上の機能的対立遺伝子が認められ,これは超迅速代謝と一致した所見であった.毒性は,この遺伝子型に起因し,また,他の薬剤による CYP3A4 活性の阻害や一時的な腎機能の低下と相まって生じていた.
CLINICAL PRACTICE
-
B 型肝炎ワクチンによる B 型肝炎の予防
Prevention of Hepatitis B with the Hepatitis B Vaccine25 歳の看護師が,検査の結果妊娠が判明し,妊婦管理を開始するため受診している.予防接種状況の調査で女性は,現在の勤務先で B 型肝炎ワクチンの接種が行われたさいに,辞退したことを報告している.自分は採血を行わないので,リスクはないと考えているためである.女性はワクチン接種を受けるべきであろうか? B 型肝炎ワクチンの接種に関する現在の勧告はどのようなものであろうか?
CASE RECORDS OF THE MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL
-
長期にわたり血尿を呈する女性
A Woman with Long-Standing Hematuria42 歳の女性が,14 年間に及ぶ顕微鏡的血尿の評価のため,専門病院に紹介された.血尿は,膀胱炎の発現時にはじめて検出されたが,その後も蛋白尿(1+)と共に持続した.女性は境界域高血圧であった.2 人の姉妹にも血尿があり,兄は腎不全で死亡している.尿検査では変形赤血球が認められた.診断のための検査が行われた.
MECHANISMS OF DISEASE
-
大理石骨病
Osteopetrosis大理石骨病のメカニズムに関するこの概説は,破骨細胞における分子の欠損が,骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収の不均衡の原因であるとしている.実験動物では,多種類の破骨細胞機能の欠損により,大理石骨症が引き起されることがあるが,ヒトの大理石骨症で同定されているのは,ただ 1 種類,酸性化能力の欠損のみである.
SOUNDING BOARD
-
複数の疾患を有する患者に対する疾患特異的ガイドラインの潜在的な落し穴
Potential Pitfalls of Disease- Specific Guidelines for Patients with Multiple Conditions質の評価と能力に応じた報酬に関するプログラムは,医師が診療ガイドラインに基づいたケアを行うことを奨励している.複数の内科疾患を抱える患者の治療では,疾患特異的なガイドラインを遵守した場合,10 種類以上の薬剤の使用が必要となることが多いが,そのような患者において,8,9,10 種類目の薬剤のもつ限られた利益と有害作用とについては知られていない.著者らは,複数の慢性疾患を有する患者に薬剤を処方するさいに,患者の QOL,希望,価値観を考慮することの重要性を強調している.