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April 8, 1999 Vol. 340 No. 14

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レチノイド X 受容体の選択的リガンドに関連した中枢性甲状腺機能低下症
Central Hypothyroidism Associated with Retinoid X Receptor–Selective Ligands

S.I. SHERMAN AND OTHERS

背景

皮膚 T 細胞リンパ腫の患者で,レチノイド X 受容体の選択的リガンドであるベキサロテン(bexarotene)による治療中に症状性の中枢性甲状腺機能低下症(甲状腺刺激ホルモン(TSH)およびチロキシン(T4)の血清中濃度の低下が特徴)が発現したことによって,われわれは,このようなリガンドが,甲状腺ホルモン(TH)非依存性メカニズムによる甲状腺刺激ホルモンの産生を可逆的に抑制し,その結果として中枢性甲状腺機能低下症を発症させるという仮説を立てた.

方 法

高用量ベキサロテンの経口投与試験に 1 施設から組み入れられた 27 例の皮膚 T 細胞リンパ腫の患者について,その甲状腺機能を評価した.また,in vitro において,甲状腺刺激ホルモンのβ-サブユニットの遺伝子プロモーターの活性に対するトリヨードチロニン(T3),9-cis-retinoic acid,およびレチノイド X 受容体の選択的リガンド LGD346 の作用についても検討した.

結 果

甲状腺刺激ホルモンの平均血清中濃度は,試験開始時には 2.2 mU/L であったのが,ベキサロテンの治療中には 0.05 mU/L に低下した(p<0.001).また,遊離チロキシン(FT4)の平均血清中濃度も,試験開始時には 1.0 ng/dL(12.9 pmol/L)であったのが,この治療中には 0.45 ng/dL(5.8 pmol/L)に低下した(p<0.001).甲状腺刺激ホルモンの分泌抑制の程度は,ベキサロテンの高用量(体表面積当たりの 1 日用量> 300 mg/m2)の治療を受けた患者およびインターフェロンαの治療歴のある患者で大きい傾向が認められた.19 例に甲状腺機能低下症の症状・徴候が発現し,とくに倦怠感と寒冷不耐性の頻度が高かった.これらの症状はチロキシン療法を開始すると改善し,ベキサロテン治療を中止することによってすべての患者の甲状腺機能が正常に復した.LGD346 は,in vitro において,甲状腺刺激ホルモンのβ-サブユニットの遺伝子プロモーターの活性を 50%まで抑制したが,この抑制作用の程度はトリヨードチロニンと 9-cis-retinoic acid と同程度であった.

結 論

甲状腺機能低下症は,高用量のベキサロテン治療を受けている皮膚 T 細胞リンパ腫の患者に発症する可能性がある.この理由としてもっとも可能性が高いのは,レチノイド X 受容体の選択的リガンドが甲状腺刺激ホルモンの分泌を抑制することである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 340 : 1075 - 9. )