April 15, 1999 Vol. 340 No. 15
急性心筋梗塞に併発した心原性ショックの経時的傾向
Temporal Trends in Cardiogenic Shock Complicating Acute Myocardial Infarction
R.J. GOLDBERG AND OTHERS
急性心筋梗塞に伴う心原性ショックの発生率と死亡率の動向については,限られた情報しか得られていない.そこで,われわれは,ある一つの地域社会における 1975~97 年のあいだでの急性心筋梗塞に併発した心原性ショックの発生率と,このような病態に陥った患者の病院における死亡率について検討した.
マサチューセッツ州の主要都市であるウスターの居住者で,1975~97 年までの 11 回の各年ごとに,急性心筋梗塞と確定診断されてこの地域のすべての病院に入院した 9,076 例を対象として観察研究を実施した.今回の研究期間には,再灌流療法が医療現場に導入された前後の期間を含めた.
心原性ショックの発生率は経時的には比較的安定したままで,急性心筋梗塞の患者における平均発生率は 7.1%であった.多変量回帰分析の結果から,ショックが発生するリスクは,1970 年代の中期から後期に入院した患者と比べて本研究の後期に入院した患者で実質的に低下していないことが示された.心原性ショックを併発した患者の入院中の死亡率(71.7%)は,心原性ショックを併発しなかった患者(12.0%)よりも有意に高かった(p<0.001).心原性ショックを併発した患者の入院中の生存率は,1990 年代の中後期で有意に上昇する傾向が,補正前の分析でも補正後の分析でも認められた.
今回の結果は,急性心筋梗塞に併発した心原性ショックの発生率が 23 年間にわたって有意に変化しなかったことを示している.しかしながら,短期間の生存率は,近年,すなわち冠動脈再灌流の治療戦略の実施が増加したのと同時期に上昇してきている.