April 29, 1999 Vol. 340 No. 17
併用抗レトロウイルス療法の治療を受けた HIV-1 感染成人における Pneumocystis carinii 肺炎に対する一次予防の中止
Discontinuation of Primary Prophylaxis against Pneumocystis carinii Pneumonia in HIV-1 Adults Treated with Combination ART
H. FURRER AND OTHERS
併用抗レトロウイルス療法による治療が成功しているヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者では,Pneumocystis carinii 肺炎(ニューモシスチスカリニ肺炎)の一次予防を中止できるかどうかは明らかにされていない.われわれは,スイス HIV コホート研究(Swiss HIV Cohort Study)の患者を対象として,予防治療を中止することの安全性を前向きに検討した.
本試験では,併用抗レトロウイルス療法中に CD4 陽性細胞数が 200/mm3 以上に増加し,その総リンパ球数に占める割合が 14%以上である状態が 12 週間以上持続していた患者を適格とした.予防治療は試験登録時に中止し,その後は 3 ヵ月ごとに患者に検査を行った.主要エンドポイントは P. carinii 肺炎の発症とし,副次的エンドポイントはトキソプラスマ脳炎の発症とした.
今回の解析に組み入れられた 262 例のうち,121 例(46.2%)は試験開始時に Toxoplasma gondii の IgG 抗体検査が陽性であった.試験登録時の CD4 陽性細胞数の中央値は 325/mm3(範囲,210~806)であった;CD4 陽性細胞数の最低値の中央値は 110/mm3(範囲,0~240/mm3)であった.中央値で 11.3 ヵ月(範囲,3.0~18.8 ヵ月)の追跡期間中に,9 例で予防治療が再開され,2 例が死亡した.P. carinii 肺炎またはトキソプラスマ脳炎を発症した患者はいなかった.P. carinii 肺炎の発症率の片側 99%信頼限界の上限は,100 患者-年当り 1.9 人(238 患者-年の追跡調査に基づいて算出)であった.トキソプラスマ脳炎では,この上限は 100 患者-年当り 4.2 人(110 患者-年の追跡調査に基づいて算出)であった.
併用抗レトロウイルス療法を受けており,CD4 陽性細胞数が 200/mm3 以上に増加し,総リンパ球数に占める割合が 14%以上の状態が持続している HIV 感染患者では,P. carinii 肺炎の一次予防を中止しても安全であると考えられる.