急性虚血性脳卒中に対する組織プラスミノーゲン活性化因子の 1 年後の効果
Effects of Tissue Plasminogen Activator for Acute Ischemic Stroke at One Year
T.G. KWIATKOWSKI AND OTHERS
1995 年に,二つの部分で構成されている国立神経疾患-脳卒中研究所(NINDS)の遺伝子組換え組織プラスミノーゲン活性化因子脳卒中試験(National Institute of Neurological Disorders and Stroke Recombinant Tissue Plasminogen Activator Stroke Study)によって,急性虚血性脳卒中の症状が出現してから 3 時間以内に組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)の治療を受けた患者は,脳卒中後 3 ヵ月の時点において,最小限の障害しか残っていないか,あるいは障害がまったく認められなくなる可能性が,プラセボの投与を受けた患者よりも少なくとも 30%は高かったということが示された.しかしながら,この有益性が,さらに長期間にわたって維持されるのかどうかということについてはわかっていなかった.
NINDS 試験には,合計で 624 例の脳卒中患者が,t-PA またはプラセボのどちらかの投与に無作為に割り付けられた.これらの患者の転帰データを,脳卒中の発現後 12 ヵ月間にわたって収集した.転帰の主要評価尺度は,バーセル指数(the Barthel index),改訂ランキン尺度(the modified Rankin Scale),およびグラスゴー転帰尺度(the Glasgow Outcome Scale)による測定で,最小限の障害または障害なしと定義された“好ましい転帰”であった.治療効果については,総合統計量を用いて評価した.
二つの試験部分を組み合せた 6 ヵ月および 12 ヵ月の時点の試験結果に対して intention-to-treat(ITT)解析を行うと,総合統計量が t-PA 群を支持していることを示す結果が得られた(6 ヵ月時点の好ましい転帰のオッズ比,1.7;95%信頼区間,1.3~2.3;12 ヵ月時点の好ましい転帰,1.7;95%信頼区間,1.2~2.3).t-PA の治療を受けた患者は,プラセボの治療を受けた患者よりも,12 ヵ月時点において,最小限の障害または障害なしとなる可能性が少なくとも 30%は高かった(好ましい転帰と判定された患者の割合の絶対的増加,11~13%).12 ヵ月目までの死亡率には,t-PA 群とプラセボ群とのあいだに有意な差はなかった(24% 対 28%,p = 0.29).ベースライン時に確定された脳卒中の種類と治療とのあいだには,治療に対する長期反応についての交互作用は認められなかった.12 ヵ月目までの脳卒中の再発率は 2 群で同程度であった.
急性虚血性脳卒中の患者では,症状発現後 3 時間以内に t-PA の治療を受けた患者は,プラセボの投与を受けた患者よりも,12 ヵ月間の追跡調査期間中に,最小限の障害しか残らないか,あるいは障害がまったく認められなくなるという可能性が高かった.これらの結果は,t-PA に,このような患者に対して持続性の有益性があるということを示している.