各種の食事に含まれる水素添加脂質の血清リポ蛋白コレステロール値に対する影響
Effects of Different Forms of Dietary Hydrogenated Fats on Serum Lipoprotein Cholesterol Levels
A.H. LICHTENSTEIN, L.M. AUSMAN, S.M. JALBERT, AND E.J. SCHAEFER
トランス配置に 1 個以上の二重結合を含んでいる脂肪酸は,水素添加脂質にみられる脂肪酸であるが,シス配置にしか二重結合を含んでいない不飽和脂肪酸と比較して,血清リポ蛋白コレステロール値に有害な影響があることが代謝研究によって示唆されている.そこでわれわれは,トランス脂肪酸の含有量が大きく異なる食事が,血清リポ蛋白コレステロール値に及ぼす影響を比較した.
男女各 18 例に,6 種類の食事を無作為な順序で 35 日間摂取させた.各食事の食物は同一とし,各食事の熱量の 3%は脂質で摂取されるようにした.その脂質の 2/3 は,大豆油(トランス脂肪酸含有量が脂質 100 g 当り<0.5 g),半液状マーガリン(100 g 当り<0.5 g),ソフトマーガリン(100 g 当り 7.4 g),ショートニング(100 g 当り 9.9 g),スティックマーガリン(100 g 当り 20.1 g)のいずれかを使用した.血清中のリポ蛋白コレステロール値,トリグリセリド値,アポリポ蛋白値に対するこれらの食事の影響を,バターを多く使用した食事,すなわち飽和脂肪含有量の高い食事の影響と比較した.
被験者がバターを多く使用した食事を摂取した後の,血清低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値の平均(±SD)は 177±32 mg/dL(4.58±0.85 mmol/L),血清高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値の平均は 45±10 mg/dL(1.2±0.26 mmol/L)であった.大豆油,半液状マーガリン,ソフトマーガリン,ショートニング,スティックマーガリンを多く使用した食事を摂取した後は,LDL コレステロール値は,平均で,それぞれ 12%,11%,9%,7%,5%低下した;HDL コレステロール値は,それぞれ 3%,4%,4%,4%,6%低下した.HDL コレステロールに対する総コレステロールの比は,大豆油を使用した食事と半液状マーガリンを使用した食事の摂取後にもっとも低く,スティックマーガリンを使用した食事の摂取後にもっとも高かった.
今回の試験結果は,トランス脂肪酸と飽和脂肪の含有量が少ない食品の摂取には,血清リポ蛋白コレステロール値に有益な作用があることを示している.