分娩様式とヒト免疫不全ウイルス 1 型の垂直伝播のリスク ― 15 報の前向きコホート研究のメタアナリシス
The Mode of Delivery and the Risk of Vertical Transmission of Human Immunodeficiency Virus Type 1 — A Meta-Analysis
THE INTERNATIONAL PERINATAL HIV GROUP
選択的帝王切開とヒト免疫不全ウイルス 1 型(HIV-1)の垂直伝播との関係を評価するために,前向きコホート研究 15 報の個々の患者のデータを用いてメタアナリシスを行った.
今回のメタアナリシスには,最低 100 組以上の母子ペアを研究対象としていた北米および欧州の研究を組み入れた.分娩様式の定義については統一した定義を用いた.そして,選択的帝王切開は,分娩の開始前および破水前に行われた帝王切開と定義した.垂直伝播との関連が知られている他の因子で補正するために,多変量ロジスティック回帰分析を用いて解析を行った.
主要解析には 8,533 組の母子ペアのデータを含めた.抗レトロウイルス療法の実施,母親の病期,および新生児の出生体重で補正すると,HIV-1 の垂直伝播の確率は,他の分娩様式と比較して,選択的帝王切開で約 50%低下していた(補正オッズ比,0.43;95%信頼区間,0.33~0.56).研究対象集団を破水から分娩までの時間が短かった患者に限定しても同様の結果が得られた.伝播の確率は,他の分娩様式で抗レトロウイルス療法も未実施の場合と比較して,選択的帝王切開と,出産前,分娩時,および新生児期の抗レトロウイルス療法を実施した場合では約 87%低下していた(補正オッズ比,0.13;95%信頼区間,0.09~0.19).出産前,分娩時,および新生児期に抗レトロウイルス療法を受けた母子ペアの垂直伝播の割合は,選択的帝王切開術を受けた 196 例の母親で 2.0%,他の分娩様式で出産した 1,255 例の母親で 7.3%であった.
今回のメタアナリシスから得られた結果は,選択的帝王切開が,ジドブジンの治療効果とは独立して,母親から子供への HIV-1 の伝播のリスクを低下させることを示唆するものである.