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October 28, 1999 Vol. 341 No. 18

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散発性のくも膜下出血患者の第一度近親者に対する頭蓋内動脈瘤スクリーニングのリスクと有益性
Risks and Benefits of Screening for Intracranial Aneurysms in First-Degree Relatives of Patients with Sporadic Subarachnoid Hemorrhage

THE MAGNETIC RESONANCE ANGIOGRAPHY IN RELATIVES OF PATIENTS WITH SUBARACHNOID HEMORRHAGE STUDY GROUP

背景

頭蓋内動脈瘤破裂によるくも膜下出血患者の第一度近親者には,くも膜下出血のリスクがある.われわれは,散発性のくも膜下出血患者の第一度近親者に対する動脈瘤スクリーニングの有益性とリスクについて検討した.

方 法

連続する該当患者 193 例の前向き集団のうち,散発性のくも膜下出血の患者 160 例について,その第一度近親者(両親,同胞,子)626 例に対してスクリーニングを行った.スクリーニング検査として磁気共鳴血管造影法(MRA)を用いたが,脳動脈瘤の存在が疑われた対象者に対する基準検査として,従来の血管造影法を用いた.選択的手術の転帰は,術後 6 ヵ月目に,神経機能の Rankin 尺度の改訂版によって評価した.今回の観察研究の研究デザインには,スクリーニングの効果を評価するために,決定分析モデルを組み入れた.また,スクリーニングの効率は,くも膜下出血の発生を 1 回予防するためにスクリーニングが必要であった近親者の人数によって定義した.

結 果

動脈瘤は,第一度近親者 626 例のうち 25 例に認められた(4.0%;95%信頼区間,2.6~5.8%).このうちの 18 例が手術を受けたが,その結果,11 例で神経機能が低下した(1 例は身体障害の状態になった).動脈瘤の大きさについては,5 例が直径 5~11 mm の中型の動脈瘤,11 例が 5 mm 未満の小型の動脈瘤,2 例が小型と中型の両方の動脈瘤であった.これら 18 例の被験者の推定寿命は,平均すると,手術によって 2.5 年(あるいは,スクリーニングを受けた人では 1 人当り 0.9 ヵ月)延長したものの,これには 1 人当り 19 年間の機能低下という犠牲が払われていた.一生涯でみたときのくも膜下出血の発生を 1 回予防するためにスクリーニングが必要であろうと考えられた近親者の人数は 149 例,また,1 回の致死的なくも膜下出血を予防するためにスクリーニングが必要であろうと考えられた近親者の人数は 298 例であった.

結 論

散発性のくも膜下出血患者の第一度近親者に対するスクリーニング計画は,現時点においては,スクリーニングによって得られる寿命のわずかな延長では術後の後遺症のリスクを補うことができないので,実施するだけの十分な根拠がないように思われる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 341 : 1344 - 50. )