November 25, 1999 Vol. 341 No. 22
四つの病院における Clostridium difficile のクリンダマイシン耐性株による下痢の流行
Epidemics of Diarrhea Caused by a Clindamycin-Resistant Strain of Clostridium difficile in Four Hospitals
S. JOHNSON AND OTHERS
1989~92 年のあいだに,新たに識別された Clostridium difficile の 1 株に起因した下痢が,米国の異なる地域にある四つの病院で大発生した.これらの病院の一つで発生した下痢がクリンダマイシンの汎用と関連していたので,われわれは,この大発生で分離された流行株の耐性遺伝子を調べるとともに,これらの発生においてクリンダマイシンの使用が演じた役割を検討した.
クリンダマイシンの使用と C. difficile に関連した下痢との関係を調べるために,これら四つの病院のうちの 3 病院において症例対照研究を実施した.今回分離されたすべての流行株と,そのぞれの発生の期間に同定された流行株以外の代表的な分離株について,クリンダマイシンに対する感受性を検査した.さらに,分離株の代表的な株から得られた染色体 DNA を,ドットブロットハイブリダイゼーション法で分析し,すでに報告されている C. perfringens および C. difficile で発見されたエリスロマイシン耐性遺伝子 ― エリスロマイシンリボソームメチラーゼ B(ermB)遺伝子 ― から得られたプローブとプライマーを用いて,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法で増幅した.
Mantel–Haenszel 法を用いて結果を併合した症例対照研究の層別解析で,クリンダマイシンの使用が,非流行株による下痢の患者と比較して,C. difficile の流行株による下痢の患者で有意に多かったことが示された(併合したオッズ比,4.35;95%信頼区間,2.02~9.38;p<0.001).他系統の抗生剤の投与や外科病棟への入院には,この流行株が原因の C. difficile に関連した下痢のリスクとの有意な関連は認められなかった.今回の発生で分離された流行株のすべてが,クリンダマイシンに高度耐性化していた(最小発育阻止濃度(MIC),>256 μg/mL).DNA ハイブリダイゼーション法と PCR 法からは,マクロライド系,リンコサミド系,およびストレプトグラミン系の抗生剤に対する耐性化に介在している 23S リボソーム RNA メチラーゼの遺伝暗号を規定する ermB 遺伝子が,これらすべての分離株に存在していることが示された.非流行株では,クリンダマイシンに耐性化していたのは 15%にすぎなかった.
クリンダマイシンに高度耐性化している C. difficile の 1 株が,異なる州の四つの病院で大発生した下痢の原因であった.クリンダマイシンの使用は,この耐性株による下痢の特異的な危険因子の一つである.そして,クリンダマイシンに対する耐性化は,抗菌剤の使用による併発症の一つとして確認された C. difficile に関連した下痢のリスクを,さらに上昇させている.