November 25, 1999 Vol. 341 No. 22
患者の生存と移植への紹介に対する透析施設の所有形態の影響
Effect of the Ownership of Dialysis Facilities on Patients' Survival and Referral for Transplantation
P.P. GARG AND OTHERS
米国では,毎年,200,000 人を超える末期腎疾患の患者が透析を受けており,その約 2/3 は営利目的の医療センターで受けている.経済的圧力,すなわち,透析に対するメディケア(老齢者医療保障制度)からの支払い額がインフレによる補正で減額されているというような圧力が,医療の質を危うくする可能性がある.透析施設も,患者が移植を受けると透析からの収入が減少するために,移植を検討するための患者紹介をしたがらなくなるということも考えられる.営利施設が,非営利施設よりも,これらの経済的圧力に対して積極的に対応しているのかどうかということは不明である.そこで,われわれは,透析施設の所有形態が,患者の生存および可能性がある移植への紹介に対して及ぼす影響について調査した.
近年発症した米国の末期腎疾患の代表的な患者コホートを集めるために,米国腎臓データシステム(the U.S. Renal Data System)のデータを利用した.患者の追跡調査は,最低 3 年間,最高で 6 年間行い,死亡まで,腎臓移植の待機リストに登録されるまで,追跡不能になるまで,あるいは 1996 年 5 月 31 日まで追跡した.患者の転帰に対して透析施設の経営形態が及ぼす影響は比例ハザードモデルを用いて評価し,社会人口統計学的,臨床的,および施設水準の特性についての差を補正した.
本研究の対象として適格であった 3,681 例の患者のうち,3,569 例を死亡の解析に,3,441 例を移植の待機リストの解析に組み入れた.末期腎疾患の 100 人年当りの粗死亡率は,営利施設で治療を受けた患者では 21.2,非営利施設で治療を受けた患者では 17.1 であった(補正相対ハザード,1.20;95%信頼区間,1.02~1.42).腎臓移植の待機リストへの登録については,営利施設で治療を受けた患者のほうが登録率が低かった(補正相対ハザード,0.74;95%信頼区間,0.56~0.98).
米国では,透析施設の営利目的の所有形態には,非営利目的の所有形態と比較して,死亡率の上昇および腎臓移植の待機リストへの低い登録率との関連が認められる.