November 25, 1999 Vol. 341 No. 22
腎臓移植を受ける機会における人種差に対する患者の治療選好の影響
The Effect of Patients' preferences on Racial Differences in Access to Renal Transplantation
J.Z. AYANIAN, P.D. CLEARY, J.S. WEISSMAN, AND A.M. EPSTEIN
米国では,黒人患者が腎臓移植を受ける機会は白人患者よりも少ないが,人種と移植に関する患者の選好との関連を直接評価した試験はほとんどない.
移植に関する患者の希望と受けた医療の経験を評価することを目的として,透析による維持治療を受け始めてから約 10 ヵ月になる末期腎疾患の適格患者(年齢範囲,18~54 歳),1,679 例のうちの 1,392 例(82.9%)に面接調査を行った.本研究への参加者は,1996~97 年に,米国の四つの地域(アラバマ州,カリフォルニア州南部,ミシガン州と,メリーランド州,バージニア州,およびコロンビア特別区の中部大西洋地方)で透析を受けていた患者の層化無作為標本から選び出した.患者の追跡調査は 1999 年の 3 月まで行った.
面接調査は,黒人女性 384 例,白人女性 354 例,黒人男性 337 例,白人男性 317 例に行った.黒人患者は,白人患者よりも移植を希望する割合が低く(移植を選好したのは,黒人女性が 76.3%に対して白人女性が 79.3%であり,黒人男性が 80.7%に対して白人男性が 85.5%),この移植への選好に対して強い確信をもつ者の割合が低かった(それぞれ,58.3% 対 65.3%,64.1% 対 75.7%;男女を合せた比較でいずれも p<0.01).しかしながら,移植センターで移植を検討するための患者の紹介率(黒人女性が 50.4%に対して白人女性が 70.5%,黒人男性が 53.9%に対して白人男性が 76.2%;それぞれの比較で p<0.001),および透析治療開始後 18 ヵ月以内の移植待機リストへの登録または移植(黒人女性が 31.3%に対して白人女性が 56.5%,黒人男性が 35.3%に対して白人男性が 60.6%;p<0.001)には,より大きな差がはっきりと認められた.これらの有為な人種差は,患者の治療の希望と移植に対する期待,社会人口統計学的特性,透析施設の種類,医療の認識,健康状態,腎不全の原因,および合併症の有無を補正しても認められた.
米国では,末期腎疾患の患者における腎臓移植に関する治療への希望と期待が,人種によって異なっている.しかしながら,これらの差では,移植の機会にみられた有為な人種差のごくわずかな部分しか説明できない.したがって,医師は,腎臓移植を望む黒人患者には,腎臓移植についての情報が十分に与えられ,その検討のための紹介を受けられることを保証すべきである.