低酸素性虚血性脳症のリスクのある新生児を早期に識別するための尿中の乳酸とクレアチニンの比の測定
Urinary Lactate:Creatinine Ratio for the Early Identification of Newborn Infants at Risk for Hypoxic–Ischemic Encephalopathy
C.-C. HUANG, S.-T. WANG, Y.-C. CHANG, K.-P. LIN, AND P.-L. WU
周産期仮死に陥った新生児は,低酸素性虚血性脳症を発症する傾向がある.しかしながら,この疾患のリスクがある乳幼児を識別するための信頼性の高い確実な識別法は開発されていない.
正常新生児 58 例と仮死新生児の 40 例について,尿中のクレアチニンに対する乳酸の比率を,プロトン核磁気共鳴(NMR)分光学を利用して,出生後 6 時間以内に測定するともに,出生後 48~72 時間にも再測定した.この測定結果を,その後の低酸素性虚血性脳症の発症の有無と相関させた.
低酸素性虚血性脳症は,正常新生児では 1 例にも発症しなかったが,仮死新生児では 40 例中の 16 例に発症した.出生後 6 時間以内に測定された尿中のクレアチニンに対する乳酸の平均(±SD)比率は,その後に低酸素性虚血性脳症が発症した新生児では 16.75±27.38 であったのに対して,正常新生児では 0.09±0.02(p<0.001),低酸素性虚血性脳症が発症しなかった仮死新生児では 0.19±0.12(p<0.001)であった.出生後 6 時間以内のこの比が 0.64 以上の値であったときには,低酸素性虚血性脳症の発症の予測に対する感度は 94%,特異度は 100%であった.出生後 48~72 時間に得られた測定値の感度および特異度は,かなり低下していた.尿中のクレアチニンに対する乳酸の平均比率は,出生後 1 年目の神経発達についての転帰が良好であった新生児(0.63±1.50)よりも有害な転帰であった新生児(25.36±32.02)で有意に高かった(p<0.001).
出生後早期における尿中のクレアチニンに対する乳酸の比率の測定は,低酸素性虚血性脳症のリスクが高い新生児を識別するのに有用であるかもしれない.