August 26, 1999 Vol. 341 No. 9
心原性ショックを併発した急性心筋梗塞に対する早期再灌流療法
Early Revascularization in Acute Myocardial Infarction Complicated by Cardiogenic Shock
J.S. HOCHMAN AND OTHERS
急性心筋梗塞の入院患者における死因の第一位は心原性ショックである.そこで,われわれは,心原性ショックの患者における早期再灌流療法の評価を目的とした無作為試験を実施した.
心筋梗塞に合併した左室不全によるショック患者を,緊急再灌流療法(152 例)または初期の内科的安定化(150 例)に無作為に割り付けた.再灌流療法は,冠動脈バイパス術あるいは血管形成術のいずれかによって行った.大動脈内バルーンカウンターパルセーション法は,両群とも患者の 86%に実施された.主要エンドポイントは,30 日目までのあらゆる死因による死亡であった.副次的エンドポイントは,6 ヵ月生存であった.
患者の平均(±SD)年齢は 66±10 歳で,32%が女性であった.55%が他院からの搬送患者であった.ショック発現までの時間の中央値は心筋梗塞から 5.6 時間で,梗塞位置はほとんどが前壁であった.再灌流療法に割り付けられた患者の 97%に対して早期の冠動脈造影が行われ,87%に再灌流療法が実施された;内科療法に割り付けられた患者では,臨床上の適用徴候が認められない状態で早期に再灌流療法に移行したのは 2.7%だけであった.30 日目での全死亡率には,再灌流療法群と内科療法群で有意な差は認められなかった(それぞれ 46.7%および 56.0%;2 群間の差,-9.3%;差の 95%信頼区間,-20.5~1.9%;p = 0.11).しかしながら,6 ヵ月目での死亡率は,血行再潅流群が内科療法群よりも低かった(50.3% 対 63.1%,p = 0.027).
心原性ショックの患者では,緊急再灌流療法は,30 日目での全死亡率を有意に低下させなかった.しかしながら,6 ヵ月後には,有意な生存率改善が認められた.心原性ショックを併発している急性心筋梗塞の患者に対しては,早期再灌流療法の施行を是非考慮すべきであろう.