September 2, 1999 Vol. 341 No. 10
重症心不全患者の合併症および死亡に対するスピロノラクトンの効果
The Effect of Spironolactone on Morbidity and Mortality in Patients with Severe Heart Failure
B. PITT AND OTHERS
アルドステロンは心不全の病態生理において重要な役割を担っている.
今回の二重盲検試験においては,アンジオテンシン変換酵素阻害薬,ループ利尿薬,および必要に応じてジゴキシンで治療中の,左室駆出率 35%以下の重症心不全患者 1,663 例を対象とした.スピロノラクトン 1 日 25 mg を投与する群に 822 例,プラセボを投与する群に 841 例が無作為に割り付けられた.主要エンドポイントは全死因死亡とした.
中間解析でスピロノラクトンの有効性が示されたため,追跡期間平均 24 ヵ月の時点で,試験は予定よりも早く中止された.死亡はプラセボ群 386 例(46%),スピロノラクトン群 284 例(35%)であった(死亡の相対リスク,0.70;95%信頼区間,0.60~0.82;p < 0.001).スピロノラクトン群における死亡リスクの 30%減少は,心不全の増悪による死亡と心臓突然死の両リスクがプラセボ群よりも低かったことに起因していた.スピロノラクトン群では心不全の増悪による入院の頻度が,プラセボ群に比べ 35%減少した(相対リスク,0.65;95%信頼区間,0.54~0.77;p < 0.001).さらに,スピロノラクトンの投与を受けた患者では,NYHA 心機能分類上,心不全の症状に有意な改善が認められた(p < 0.001).男性患者における女性化乳房または乳房痛の発現頻度は,スピロノラクトン群 10%,プラセボ群 1%であった(p < 0.001).重篤な高カリウム血症の発現頻度は,両群とも非常に低かった.
従来の標準的治療にスピロノラクトンを追加投与し,レセプターレベルでアルドステロンの作用を遮断することによって,重症心不全患者の合併症および死亡のリスクは大幅に減少する.