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September 2, 1999 Vol. 341 No. 10

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ヘモクロマトーシス遺伝子の臨床的発現に関する地域住民をベースにした研究
A Population-Based Study of the Clinical Expression of the Hemochromatosis Gene

J.K. OLYNYK AND OTHERS

背景

遺伝性ヘモクロマトーシスは,第 6 染色体上のヘモクロマトーシス(HFE)遺伝子の突然変異 C282Y のホモ接合性,血清トランスフェリンの飽和度の上昇,および全身の過剰な鉄沈着と関連している.

方 法

本疾患の有病率および HFE 遺伝子の臨床発現の評価を目的として,豪州のブセルトンに住む地域住民をベースにした研究を実施した.血清中のトランスフェリン飽和度およびフェリチン濃度と,C282Y 突然変異および H63D 突然変異(この突然変異は肝臓の鉄濃度の上昇に関与している可能性がある)の有無を調べるために,1994 年に,非血縁の白人成人 3,011 例から血液検体を採取した.そして,トランスフェリンの飽和度が持続的に上昇(45%以上)していた被験者,あるいは C282Y 突然変異がホモ接合であった被験者の全例についての評価を行った.血清フェリチン濃度が 300 ng/mL 以上の被験者に対しては,肝生検を受けることをすすめた.被験者の追跡調査は 4 年間に達するまで実施した.

結 果

C282Y 突然変異は,被験者の 16 例(0.5%)がホモ接合,424 例(14.1%)がヘテロ接合であった.血清トランスフェリンの飽和度は,ホモ接合であった 16 例の被験者のうちの 15 例が 45%以上であった; 残りの 1 例は 43%であった.ホモ接合の被験者 4 例は,すでにヘモクロマトーシスと診断されていたが,残りの 12 例は診断を受けていなかった.これら 12 例の患者のうち 7 例は,1994 年に血清フェリチン濃度が上昇していた; 血清フェリチン濃度は,1998 年には,この 7 例のうち 6 例でさらに上昇したが,残りの 1 例は高値であったものの 1994 年よりは低下していた.残りのホモ接合患者のうち 4 例の血清フェリチン濃度は正常範囲のままであった.ホモ接合被験者 16 例中 11 例が肝生検を受けた; その結果,3 例に肝線維症,過度の飲酒歴があった 1 例には肝硬変および軽度の微小空胞変性が認められた.ホモ接合被験者 16 例中の 8 例には,肝腫大,皮膚色素沈着,および関節炎などの遺伝性ヘモクロマトーシスの存在と一致した臨床所見が認められた.

結 論

北欧系白人成人の集団では,0.5%が HFE 遺伝子の C282Y 突然変異のホモ接合であった.しかしながら,ホモ接合であったこれらの住民の半数にしか,ヘモクロマトーシスの臨床徴候は認められず,しかも,これらの住民の 1/4 は血清フェリチン濃度が 4 年間にわたって正常範囲内のままであった.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 341 : 718 - 24. )