March 26, 2009 Vol. 360 No. 13
欧州における前立腺癌のスクリーニングと死亡率に関する無作為化試験
Screening and Prostate-Cancer Mortality in a Randomized European Study
F.H. Schröder and Others
欧州前立腺癌スクリーニング無作為化試験(European Randomized Study of Screening for Prostate Cancer:ERSPC)は,1990 年代初期に,前立腺癌死亡率に対する前立腺特異抗原(PSA)検査によるスクリーニングの効果を検討する目的で開始された.
欧州 7 ヵ国の住民登録から,この試験のために 50~74 歳の男性 182,000 人を同定した.男性を,PSA 検査によるスクリーニングを平均で 4 年に 1 回受ける群と,そのようなスクリーニングを受けない対照群のいずれかに無作為に割り付けた.この試験では 55~69 歳の男性を中核年齢群として事前に規定し,162,243 人が対象となった.主要転帰は前立腺癌死亡率とした.死亡率については両群で同一の追跡調査を行い,2006 年 12 月 31 日に終了した.
スクリーニング群では,82%がスクリーニングを 1 回以上受けた.追跡期間中央値 9 年間における前立腺癌の累積発生率は,スクリーニング群 8.2%,対照群 4.8%であった.スクリーニング群の前立腺癌死亡率比は,対照群と比較して 0.80 であった(95%信頼区間 [CI] 0.65~0.98,補正した P=0.04).死亡リスクの絶対差は 1,000 人あたり 0.71 であった.これは,前立腺癌死亡を 1 例予防するには,1,410 人がスクリーニングを受け,前立腺癌の患者 48 例が治療を受ける必要があることを意味する.初回のスクリーニングを実際に受けた男性(未受診例を除く)の解析では,前立腺癌死亡率比は 0.73(95% CI 0.56~0.90)であった.
PSA 検査をベースとしたスクリーニングによって前立腺癌死亡率は 20%低下したが,過剰診断のリスクが高くなった.(Current Controlled Trials 番号:ISRCTN49127736)
本論文(10.1056/NEJMoa0810084)は,2009 年 3 月 18 日に NEJM.org で発表された.