April 16, 2009 Vol. 360 No. 16
米国の病院における電子カルテの利用状況
Use of Electronic Health Records in U.S. Hospitals
A.K. Jha and Others
医療情報技術を利用すれば,より効率的で安全,かつ質の高いケアを提供できるというコンセンサスがあるにもかかわらず,米国の病院における電子カルテの導入状況に関する確かな情報はない.
特定の電子カルテ機能の導入状況について,米国病院協会(American Hospital Association)に所属するすべての急性期病院を調査した.専門家の合意に基づく電子カルテの定義に従い,臨床部門に電子カルテシステムを導入している病院の割合を算出した.また,電子カルテの導入と,病院特性,および導入の妨げあるいは促進につながると報告された要因との関連を検討した.
調査した病院の 63.1%から回答が得られた.それに基づくと,米国で総合的な電子カルテシステムを導入している(全臨床部門にシステムが備わっている)病院は 1.5%のみであり,基本的なシステムを導入している(少なくとも 1 つの臨床部門にシステムが備わっている)病院は 7.6%であった.投薬に関して,医師がコンピュータ上で指示するシステムを導入している病院は 17%のみであった.大規模な病院,都市部に立地する病院,教育病院は,電子カルテシステムを導入している割合がより高かった.システム導入を妨げる主な要因として初期投資の必要性と維持費の高さがあげられたが,電子カルテシステムを導入している病院は,同システムのない病院に比べ,このような要因をあげる割合が低かった.
米国の病院における電子カルテの導入率はきわめて低く,医療情報技術に依存した医療の遂行という目標の達成には,政策立案者は大きな障害に直面することが示唆される.米国の病院で電子カルテシステムの導入を促進するには,財政支援,インターオペラビリティ(相互運用性),技術支援職員の育成に重点をおく政策戦略が必要であると考えられる.
本論文(10.1056/NEJMsa0900592)は,2009 年 3 月 25 日に NEJM.org で発表された.