April 30, 2009 Vol. 360 No. 18
HIV に対する早期または待機的抗レトロウイルス療法が生存率に及ぼす影響
Effect of Early versus Deferred Antiretroviral Therapy for HIV on Survival
M.M. Kitahata and Others
無症状のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者に対する抗レトロウイルス療法の最適な開始時期は明らかにされていない.
米国とカナダで 1996~2005 年に治療を受けた無症状の HIV 感染者 17,517 例について,2 つの解析を並行して行った.全例に抗レトロウイルス療法の治療歴はなかった.患者を,抗レトロウイルス療法開始時の CD4+細胞数が 351~500 個/mm3 であるか,501 個/mm3 以上であるかで層別化した.この 2 つの患者群で,CD4+細胞数が各閾値にあるあいだに治療を開始した患者(早期治療群)における死亡と,閾値を下回るまで治療を見合わせた患者(待機療法群)の死亡とを比較し,相対リスクを算出した.
CD4+細胞数 351~500 個/mm3 の患者に関する 1 つ目の解析では,8,362 例が対象となり,2,084 例(25%)が早期に治療を開始し,6,278 例(75%)が治療を見合わせた.研究時期,患者コホート,人口統計学的特性,臨床的特性で補正すると,待機療法群の死亡リスクは早期治療群の 69%上昇した(待機療法群の相対リスク 1.69,95%信頼区間 [CI] 1.26~2.26,P<0.001).CD4+細胞数が 501 個/mm3 以上の患者に関する 2 つ目の解析では,9,155 例が対象となり,2,220 例(24%)が早期に治療を開始し,6,935 例(76%)が治療を見合わせた.待機療法群の死亡リスクは早期治療群の 94%上昇した(相対リスク 1.94,95% CI 1.37~2.79,P<0.001).
CD4+細胞数が今回規定した 2 つの閾値を下回る前に抗レトロウイルス療法を開始すると,閾値を下回るまで見合わせる待機療法に比べ,生存率は有意に改善した.
本論文(10.1056/NEJMoa0807252)は,2009 年 4 月 1 日に NEJM.org で発表された.