April 30, 2009 Vol. 360 No. 18
ロスバスタチンによる静脈血栓塞栓症の予防に関する無作為化試験
A Randomized Trial of Rosuvastatin in the Prevention of Venous Thromboembolism
R.J. Glynn and Others
動脈血栓症と静脈血栓症の経路がどの程度共有されているのか,また一方の疾患の経過に有効と示されている治療法がもう一方にも有効であるのかについては,議論が続いている.静脈血栓塞栓症リスクに対するスタチン投与の効果について,観察研究による評価にはばらつきがあり,無作為化試験のエビデンスも少ない.
低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値が 130 mg/dL(3.4 mmol/L)未満で,高感度 C 反応性蛋白値が 2.0 mg/L 以上の一見健康な男女 17,802 例を,ロスバスタチン 20 mg/日を投与する群と,プラセボを投与する群に無作為に割り付けた.被験者を,肺塞栓症または深部静脈血栓症が最初に発生するまで追跡し,intention-to-treat の原則に基づいてデータを解析した.
追跡期間中央値 1.9 年(最長 5.0 年)のあいだに,94 例が症候性静脈血栓塞栓症を発症した.内訳は,ロスバスタチン群 34 例,プラセボ群 60 例であった.静脈血栓塞栓症の発症率は,追跡 100 人年あたりロスバスタチン群 0.18,プラセボ群 0.32 であり(ロスバスタチン群のハザード比 0.57,95%信頼区間 [CI] 0.37~0.86,P=0.007),原因不明の静脈血栓塞栓症の発症率(既知の悪性疾患がなく,イベント発生 3 ヵ月以内の外傷・入院・手術歴がない状態での発症)は,ロスバスタチン群 0.10,プラセボ群 0.17 であり(ハザード比 0.61,95% CI 0.35~1.09,P=0.09),原因が明らかな静脈血栓塞栓症の発症率(癌患者であるか,外傷時,入院・手術中あるいはその直後の発症)は,ロスバスタチン群 0.08,プラセボ群 0.16 であった(ハザード比 0.52,95% CI 0.28~0.96,P=0.03).また,肺塞栓症の発症率は,ロスバスタチン群 0.09,プラセボ群 0.12 であり(ハザード比 0.77,95% CI 0.41~1.45,P=0.42),深部静脈血栓症単独の発症率は,ロスバスタチン群 0.09,プラセボ群 0.20 であった(ハザード比 0.45,95% CI 0.25~0.79,P=0.004).解析した全サブグループで効果は一貫して認められた.出血エピソードの発生率に,両群間で有意差は認められなかった.
一見健康な人を対象とした今回の試験では,ロスバスタチンの投与により症候性静脈血栓塞栓症の発症率は有意に低下した.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00239681)
本論文(10.1056/NEJMoa0900241)は,2009 年 3 月 29 日に NEJM.org で発表された.