血液透析グラフトの開存に対するジピリダモールとアスピリンの併用療法の効果
Effect of Dipyridamole plus Aspirin on Hemodialysis Graft Patency
B.S. Dixon and Others
血栓症を引き起こす動静脈グラフトの狭窄は,血液透析患者における合併症の主な原因である.手術的介入により開存性を回復できる可能性はあるが,費用がかかる.有効性の証明された薬物療法が存在しない中,ジピリダモールは,血管の増殖を阻害する作用から,有望である可能性がある.
無作為化二重盲検プラセボ対照試験において,新たな動静脈グラフトの留置後,徐放性ジピリダモール 200 mg とアスピリン 25 mg を 1 日 2 回,主要転帰が発生するまで投与した.主要転帰は,無補助一次開存(血栓症のない開存,または介入を必要としない開存)の消失とした.副次的転帰は,累積グラフト不全と死亡とした.主要転帰と副次的転帰は,事前に規定した共変量で補正した Cox 比例ハザード回帰分析を用いて解析した.
米国の 13 施設において,649 例を,4.5 年間にわたりジピリダモール+アスピリンを投与する群(321 例)と,プラセボを投与する群(328 例)のいずれかに無作為に割り付け,さらに 6 ヵ月間追跡した.1 年の時点での無補助一次開存率は,プラセボ群 23%(95%信頼区間 [CI] 18~28),ジピリダモール+アスピリン群 28%(95% CI 23~34)であり,絶対差は 5 パーセントポイントであった.ジピリダモール+アスピリン群では,無補助一次開存期間が有意に延長し(ハザード比 0.82,95% CI 0.68~0.98,P=0.03),狭窄が抑制された.累積グラフト不全,死亡,グラフト不全・死亡の複合,重篤な有害事象(出血を含む)の発生率には,両群間で有意差は認められなかった.
ジピリダモールとアスピリンの併用療法により,新たに作製されたグラフトの狭窄リスクの減少と無補助一次開存期間の改善に有意な効果が認められたが,臨床的には軽微な効果であった.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00067119)