骨髄性悪性疾患における TET2 変異
Mutation in TET2 in Myeloid Cancers
F. Delhommeau and Others
骨髄異形成症候群と骨髄増殖性疾患では,骨髄系細胞の無秩序な増殖がみられる.これらの疾患の基礎となる機序は十分には明らかにされていない.
骨髄異形成症候群,骨髄増殖性疾患,急性骨髄性白血病(AML)の患者に共通する癌抑制遺伝子の候補を同定するため,分子解析,細胞遺伝学的解析,比較ゲノムハイブリダイゼーション法,一塩基多型解析を組み合わせて解析を行った.320 例の患者で, TET2 のコード配列が同定された.in vitro でのクローン解析とヒト腫瘍細胞のマウスへの移植により,TET2 の欠失または変異がもたらす結果を解析した.
まず,骨髄異形成症候群患者 3 例,骨髄増殖性疾患患者 5 例中 3 例,原発性 AML 患者 2 例,続発性 AML 患者 1 例において,TET2 の欠失または変異を同定した.これらの骨髄異形成症候群と AML の患者 6 例は,染色体 4q24 上に後天性の遺伝子再構成を有していたため選定し,骨髄増殖性疾患患者 5 例は,Janus キナーゼ 2(JAK2)遺伝子の V617F 変異陽性造血前駆細胞中にドミナントクローンを認めたため選定した.TET2 の欠損は,骨髄異形成症候患者 81 例中 15 例(19%),骨髄増殖性疾患患者 198 例中 24 例(12%)(JAK2 V617F 変異の有無を問わず),二次性 AML 患者 21 例中 5 例(24%),慢性骨髄単球性白血病患者 9 例中 2 例(22%)でみられた.TET2 の欠損は,解析を行った骨髄増殖性疾患患者 5 例の造血幹細胞で認められ,JAK2 V617F 変異に先行していた.
TET2 の体細胞変異は,さまざまな骨髄性悪性疾患患者の約 15%で生じている.