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July 23, 2009 Vol. 361 No. 4

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神経線維腫症 2 型患者におけるベバシズマブ治療後の聴力の改善
Hearing Improvement after Bevacizumab in Patients with Neurofibromatosis Type 2

S.R. Plotkin and Others

背景

神経線維腫症 2 型は,第 8 脳神経から発生する良性腫瘍,すなわち両側性前庭神経鞘腫(聴神経腫瘍)を伴う遺伝的病態である.その重篤な合併症として,重度の聴覚障害がある.このような腫瘍に対する内科的治療は存在しない.

方 法

神経線維腫症 2 型に伴う聴神経腫瘍 21 個と,孤発性の聴神経腫瘍 22 個のパラフィン包埋標本について,血管内皮増殖因子(VEGF)と,その受容体のうち VEGFR-2,ニューロピリン-1,ニューロピリン-2 の 3 種類の発現パターンを調べた.神経線維腫症 2 型と進行性の聴神経腫瘍を有し,標準治療が適応とならない連続した 10 例の患者に対し,抗 VEGF モノクローナル抗体であるベバシズマブを用いた治療を行った.画像上の効果は,腫瘍体積がベースラインに比べ 20%以上減少することと定義した.聴力への効果は,単語認識スコアがベースラインに比べ有意に上昇することと定義した.

結 果

免疫組織化学的解析では,VEGF は聴神経腫瘍の 100%で発現しており,VEGFR-2 は腫瘍血管の 32%で発現していた.指標とした腫瘍 10 個の 1 年あたりの体積増加率は,治療前で中央値 62%であった.ベバシズマブ治療を行った 10 例のうち,9 例で腫瘍が縮小した.6 例で画像上の効果がみられ,うち 4 例では 11~16 ヵ月の追跡期間中その効果が持続した.中央値での最良効果は,26%の腫瘍体積減少であった.聴力への効果には,3 例が適格ではなかった.適格であった 7 例のうち,4 例で聴力への効果がみられ,2 例では聴力が安定しており,1 例では進行性の聴覚障害がみられた.グレード 1 または 2 の有害事象は 21 件認められた.

結 論

ベバシズマブにより VEGF を阻害することで,神経線維腫症 2 型患者の聴力は,全例ではないが一部で改善され,増殖する聴神経腫瘍のほとんどで腫瘍体積の減少がみられた.

本論文(10.1056/NEJMoa0902579)は,2009 年 7 月 8 日に NEJM.org で発表された.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2009; 361 : 358 - 67. )