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January 24, 2019 Vol. 380 No. 4

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後天性血栓性血小板減少性紫斑病に対するカプラシズマブ投与
Caplacizumab Treatment for Acquired Thrombotic Thrombocytopenic Purpura

M. Scully and Others

背景

後天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)では,von Willebrand 因子切断プロテアーゼ ADAMTS13 の免疫介在性の欠損により,von Willebrand 因子マルチマーが血小板に無制限に結合して微小血管血栓症が生じ,その結果,血小板減少症,溶血性貧血,組織虚血が生じる.抗 von Willebrand 因子ヒト化 2 価単一可変領域免疫グロブリン断片であるカプラシズマブ(caplacizumab)は,von Willebrand 因子マルチマーと血小板の相互作用を阻害する.

方 法

二重盲検比較試験で,TTP 患者 145 例を,血漿交換中とその後 30 日間,カプラシズマブを投与する群(負荷用量 10 mg を静脈内ボーラス投与し,その後 10 mg/日を皮下投与)とプラセボを投与する群に無作為に割り付けた.主要評価項目は,血小板数が正常化するまでの期間とし,その後 5 日以内に連日の血漿交換療法が中止されることとした.主な副次的評価項目は,試験治療期間中の TTP 関連死・TTP の再発・血栓塞栓イベントの複合,試験期間のいずれかの時点での TTP の再発,難治性 TTP,臓器障害マーカーの正常化などとした.

結 果

血小板数正常化までの期間の中央値は,カプラシズマブ群のほうがプラセボ群よりも短く(2.69 日 [95%信頼区間 {CI} 1.89~2.83] 対 2.88 日 [95% CI 2.68~3.56],P=0.01),カプラシズマブ投与例は,血小板数が正常化する確率がプラセボ投与例の 1.55 倍であった.複合転帰が発生した患者の割合は,カプラシズマブ群がプラセボ群よりも 74%低かった(12% 対 49%,P<0.001).試験期間のいずれかの時点で TTP が再発した患者の割合は,カプラシズマブ群がプラセボ群の 67%低かった(12% 対 38%,P<0.001).難治性 TTP はカプラシズマブ群では認められず,プラセボ群では 3 例に認められた.カプラシズマブ投与例は,プラセボ投与例よりも血漿交換を必要とした日数が少なく,入院期間が短かった.もっとも頻度の高かった有害事象は皮膚粘膜出血であり,カプラシズマブ群の 65%とプラセボ群の 48%で報告された.試験治療期間中にプラセボ群の 3 例が死亡した.治療期間終了後にカプラシズマブ群の 1 例が脳虚血で死亡した.

結 論

TTP 患者では,カプラシズマブ投与はプラセボと比較して,血小板数の正常化が早いこと,試験治療期間中の TTP 関連死・TTP の再発・血栓塞栓イベントの複合転帰の発生率が低いこと,試験期間中の TTP の再発率が低いことに関連した.(アブリンクス社から研究助成を受けた.HERCULES 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02553317)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2019; 380 : 335 - 46. )