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April 27, 2023 Vol. 388 No. 17

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英国とアイルランドにおける小児希少疾患の遺伝子診断
Genomic Diagnosis of Rare Pediatric Disease in the United Kingdom and Ireland

C.F. Wright and Others

背景

小児の疾患には,浸透率が高く,遺伝的に多様なさまざまな病態があり,ゲノムワイドな診断アプローチが適している.分子特性を見出すのは困難であるが,生涯にわたり大きな利益となる可能性がある.

方 法

英国とアイルランドの 24 地域の遺伝診療科において,単一遺伝子性の可能性が高く,診断困難な重度の発達障害の発端者がいる 13,500 超の家族を対象として,大規模なシーケンシング研究を行った.標準化された表現型データを収集し,エクソームシーケンシングとマイクロアレイ解析を行い,新規の遺伝的原因を調査した.反復的にバリアント解析を行うパイプラインを構築し,候補バリアントを臨床チームに報告した.臨床医はその妥当性を検討したり,家族に診断を伝える際の情報として用いたりした.多重回帰分析を行い,診断の確率に影響を及ぼす要因を評価した.

結 果

発端者 13,449 例を解析の対象とした.報告した候補バリアント数の平均は,両親・発端者トリオ 1 組あたり 1.0,発端者単独では 1 例あたり 2.5 であった.バリアントの分類に臨床的アプローチと計算アプローチを用いると,発端者の約 41%(13,449 例中 5,502 例)の診断がついた.臨床的アサーションにより診断されたトリオ発端者は 3,599 例おり,そのうち約 76%が新規の病的バリアントを有していた.このほか,発端者の 22%(13,449 例中 2,997 例)が,単一遺伝子性の発達障害と強く関連する遺伝子に,臨床的意義不明のバリアントを有していた.両親・発端者トリオでの組入れが,診断の確率にもっとも大きな影響を及ぼした(オッズ比 4.70,95%信頼区間 [CI] 4.16~5.31).発端者が診断を受ける確率が低かったのは,超早産(在胎 22~27 週)で出生した場合(オッズ比 0.39,95% CI 0.22~0.68),子宮内で抗てんかん薬に曝露した場合(オッズ比 0.44,95% CI 0.29~0.67),母親が糖尿病を有する場合(オッズ比 0.52,95% CI 0.41~0.67),アフリカ系である場合(オッズ比 0.51,95% CI 0.31~0.78)であった.

結 論

単一遺伝子性の可能性が高く,診断困難な重度の発達障害の発端者において,ゲノムワイドデータのマルチモーダル解析は,過去に診断が試みられていた場合でも,良好な診断能を示した.(ヘルスイノベーションチャレンジ基金,ウェルカム サンガー研究所から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 388 : 1559 - 71. )