April 27, 2023 Vol. 388 No. 17
乳児のリンパ芽球性白血病に対する化学療法に追加するブリナツモマブ
Blinatumomab Added to Chemotherapy in Infant Lymphoblastic Leukemia
I.M. van der Sluis and Others
乳児の KMT2A 再構成急性リンパ芽球性白血病(ALL)は急速に進行し,3 年無イベント生存率は 40%未満である.再発の大部分は治療中に生じ,2/3 は診断後 1 年以内,90%は 2 年以内に起こる.化学療法の強度が上がっているにもかかわらず,この数十年転帰は改善されていない.
KMT2A 再構成 ALL の乳児を対象として,CD19 を標的とする二重特異性 T 細胞誘導分子であるブリナツモマブの安全性と有効性を検討した.新たに KMT2A 再構成 ALL と診断された 1 歳未満の患児 30 例に,Interfant-06 試験で用いられた化学療法を行い,この導入療法後にブリナツモマブの投与 1 コース(15 μg/m2 体表面積/日,28 日間持続静注)を追加した.主要エンドポイントは臨床的に重要な毒性とし,ブリナツモマブが原因である可能性がある,または確実に原因と考えられた毒性で,ブリナツモマブの永久的中止,または死亡にいたったものと定義した.微小残存病変(MRD)を PCR 法で測定した.有害事象に関するデータを収集した.転帰データを Interfant-06 試験の過去対照データと比較した.
追跡期間の中央値は 26.3 ヵ月(範囲 3.9~48.2)であった.30 例全例がブリナツモマブのコースを完了した.主要エンドポイントの定義を満たす毒性は発生しなかった.重篤な有害事象は 10 件報告された(発熱 [4 件],感染 [4 件],高血圧 [1 件],嘔吐 [1 件]).毒性プロファイルは,今回の対象より年長の患者で報告されたものと一致していた.ブリナツモマブの注入後,28 例(93%)で MRD は陰性(16 例)または低値(5×10-4 未満 [すなわち,正常細胞 10,000 個あたり白血病細胞 5 個未満],12 例)となった.化学療法を継続した患児は,すべてその後の治療中に MRD 陰性となった.2 年無病生存率は,本試験では 81.6%(95%信頼区間 [CI] 60.8~92.0)であったのに対し,Interfant-06 試験では 49.4%(95% CI 42.5~56.0)であり,全生存率はそれぞれ 93.3%(95% CI 75.9~98.3),65.8%(95% CI 58.9~71.8)であった.
Interfant-06 化学療法に追加するブリナツモマブは,新たに KMT2A 再構成 ALL と診断された乳児において,Interfant-06試験の過去対照と比較して,安全と思われ,有効性が高かった.(マクシマ王妃センター財団ほかから研究助成を受けた.EudraCT 登録番号 2016-004674-17)