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July 27, 2023 Vol. 389 No. 4

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ナルコレプシータイプ 1 に対する経口オレキシン 2 型受容体作動薬
Oral Orexin Receptor 2 Agonist in Narcolepsy Type 1

Y. Dauvilliers and Others

背景

ナルコレプシータイプ 1 は,脳の神経ペプチドであるオレキシンの重度の減少または欠乏により引き起こされる.

方 法

ナルコレプシータイプ 1 の患者を対象として,経口オレキシン 2 型受容体選択的作動薬 TAK-994 の第 2 相無作為化プラセボ対照試験を行った.臨床基準に基づきナルコレプシータイプ 1 の診断が確定した患者を,TAK-994 を(30 mg,90 mg,180 mg のいずれかで)1 日 2 回経口投与する群と,プラセボを投与する群に無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,覚醒維持検査(MWT;範囲は 0~40 分で,20 分以上で覚醒維持能力正常)における,平均睡眠潜時(入眠に要する時間)のベースラインから 8 週目までの平均変化量とした.副次的エンドポイントは,エプワース眠気尺度(ESS)スコア(0~24 で,数値が高いほど日中の眠気が強いことを示し,10 未満で正常)の変化量,1 週間あたりの情動脱力発作の発生率などとした.

結 果

73 例のうち,17 例が TAK-994 30 mg 1 日 2 回,20 例が 90 mg 1 日 2 回,19 例が 180 mg 1 日 2 回,17 例がプラセボの投与を受けた.肝毒性のため,第 2 相試験および延長試験は早期に中止された.主要エンドポイントのデータが得られたのは 41 例(56%)であり,データ欠損の主な理由は試験の早期中止であった.MWT における,平均睡眠潜時の 8 週目までの変化量の最小二乗平均値は,30 mg 群 23.9 分,90 mg 群 27.4 分,180 mg 群 32.6 分,プラセボ群 -2.5 分であった(プラセボ群との差は 30 mg 群 26.4 分,90 mg 群 29.9 分,180 mg 群 35.0 分;すべての比較で P<0.001).ESS スコアの 8 週目までの変化量の最小二乗平均値は,30 mg 群 -12.2,90 mg 群 -13.5,180 mg 群 -15.1,プラセボ群 -2.1 であった(プラセボ群との差は 30 mg 群 -10.1,90 mg 群 -11.4,180 mg 群 -13.0).8 週の時点での 1 週間あたりの情動脱力発作の発生率は,30 mg 群 0.27,90 mg 群 1.14,180 mg 群 0.88,プラセボ群 5.83 であった(プラセボ群に対する率比は 30 mg 群 0.05,90 mg 群 0.20,180 mg 群 0.15).有害事象は TAK-994 の投与を受けた 56 例中 44 例(79%)に発現し,とくに頻度が高かったのは尿意切迫,頻尿であった.肝酵素値の臨床的に重要な上昇が 5 例に発現し,Hy's law の基準を満たす薬物性肝障害が 3 例に発現した.

結 論

ナルコレプシータイプ 1 の患者を対象とした第 2 相試験で,オレキシン 2 型受容体作動薬は,プラセボと比較して,8 週の期間における眠気と情動脱力発作の指標をより大きく改善させたが,肝毒性を伴った.(タケダ ディベロップメント センター アメリカズ社から研究助成を受けた.TAK-994-1501 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04096560,TAK-994-1504 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04820842)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 309 - 21. )