The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み
  • 目 次
  • This Week at NEJM.org

    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

February 28, 2002
Vol. 346 No. 9

ORIGINAL ARTICLES

  • 慢性骨髄性白血病におけるメシル酸イマチニブへの血液学的・細胞遺伝学的効果
    Hematologic and Cytogenetic Responses to Imatinib Mesylate in Chronic Myelogenous Leukemia

    慢性骨髄性白血病におけるメシル酸イマチニブへの血液学的・細胞遺伝学的効果

    慢性骨髄性白血病(CML)のフィラデルフィア染色体を形成する t(9;22) 転座は,融合遺伝子 BCR-ABL を形成する.新規遺伝子は白血病の原因となる異常チロシンキナーゼをコードする.メシル酸イマチニブ(imatinib mesylate)は BCR-ABL 蛋白の機能を阻害し,CML の寛解を誘導することができる.この大規模試験では,イマチニブはインターフェロン α による標準的な療法に失敗したほとんどの患者で,細胞遺伝学的および血液学的効果を認めた.
    この研究は,忍容性に優れた経口剤であるイマチニブが CML に対し有効であることをさらに裏付けている.しかし,細胞遺伝学的効果が高感度ポリメラーゼ連鎖反応を用いて評価されていないことから,効果のあったほとんどの患者では疾患が残存していると考えられ,薬剤による持続療法が必要であろう.

  • 低骨塩密度の閉経後女性に対するゾレドロン酸静脈内投与
    Intravenous Zoledronic Acid in Postmenopausal Women with Low Bone Mineral Density

    低骨塩密度の閉経後女性に対するゾレドロン酸静脈内投与

    ビスホスホネート系は骨粗鬆症を改善するが,胃腸への副作用のため患者の経口レジメンに対する耐用性は低かった.間欠的な静脈内投与法は効果的であるが,最適な投与間隔は不明である.この研究では,低骨塩密度の閉経後女性を対象に,強力なビスホスホネートであるゾレドロン酸の 5 種類の静脈内投与レジメン(1 年の投与期間を通して総量 1~4 mg を 1~4 用量で)を検討し,それらをプラセボと比較検討した.
    腰椎骨塩密度は,すべてのゾレドロン酸群 5 群で同様に増加した.最長 1 年の間隔をおいてのゾレドロン酸静注は,骨代謝と骨密度について,毎日ビスホスホネート系を服用した場合と同様の効果を与える.年 1 回のゾレドロン酸の静注は,閉経後の骨粗鬆症の治療法として有効かもしれない.

  • 血友病 A 患者の第 VIII 因子に対する蛋白分解性抗体
    Proteolytic Antibodies against Factor VIII in Patients with Hemophilia A

    補充療法中に第 VIII 因子のインヒビターが現れた重症血友病 A 患者は,第 VIII 因子を加水分解できる IgG 抗体をもつことが判明した.このような抗体は,第 VIII 因子に対するインヒビターを有する患者の半数以上に検出された.
    第 VIII 因子のインヒビターは,補充療法の治療効果を無効にしてしまうため,血友病治療における大きな問題である.インヒビターを有する患者の治療費用は莫大である.この論文で示された加水分解機構は,第 VIII 因子を中和する抗体を有する血友病患者の治療への新たなアプローチを生み出すかもしれない.

  • カリブ海旅行後の好酸球性髄膜炎
    Eosinophilic Meningitis after Travel to the Carribbean

    カリブ海旅行後の好酸球性髄膜炎

    ジャマイカ旅行から帰国した数週間後に,若年成人 23 人のグループの 12 人に好酸球性髄膜炎が発症した.症状は,頭痛,頸痛,視覚障害,知覚過敏などであった.旅行者のうち 9 人は入院が必要であった.ケース・コントロール研究により,ある夕食でシーザーサラダを食べたことが,無菌性髄膜炎の発症と強く関連していることが明らかになった.
    寄生虫感染は直接確認されなかったが,臨床症状と血清学的データは,線虫(回虫)である広東住血線虫が今回の発生の病原体であるという強力な証拠を提供している.この寄生虫感染は西半球ではほとんど報告されていない.

IMAGES IN CLINICAL MEDICINE

  • Images in Clinical Medicine:梅毒性大動脈炎
    Images in Clinical Medicine: Syphilitic Aortitis

    Images in Clinical Medicine:梅毒性大動脈炎

    1 年の軽度の安定狭心症の既往を有する 74 歳男性の検査で,大動脈弁逆流の存在と矛盾しない雑音が明らかになった.

CLINICAL PRACTICE

  • Clinical Practice:大動脈狭窄
    Clinical Practice: Aortic Stenosis

    Clinical Practice:大動脈狭窄

    60 歳の男性が心雑音のため診察を受けている.この男性は定期的にジョギングをしており,心臓の症状はない.検査で,頸動脈拍動波形の立ち上りの遅延およびグレード 3/6 のピークがあとにある収縮期駆出性雑音が判明している.心エコー検査では,正常な収縮機能および重度の大動脈弁石灰化が明らかになり,ドップラー法により計測された最大弁圧較差は 64 mmHg,弁口面積の計算値は 0.7 cm2 である.
    この論文は,経験を積んだ臨床家にとっても,やりがいのある課題となりうる大動脈狭窄の管理法について述べている.

REVIEW ARTICLE

  • 薬物治療:メシル酸イマチニブによる悪性疾患の標的治療
    Drug Therapy: Targeted Treatment of Malignant Disorders with Imatinib Mesylate

    薬物治療:メシル酸イマチニブによる悪性疾患の標的治療

    この総説は,メシル酸イマチニブ(imatinib mesylate)の開発と使用について述べる.メシル酸イマチニブは,蛋白チロシンキナーゼ阻害剤で,慢性骨髄性白血病と消化管間質性腫瘍の治療に有効であり,最近米国食品医薬品局に承認された.イマチニブは血小板由来の増殖因子受容体を標的とし,フィラデルフィア染色体の融合産物を阻害し,蛋白チロシンキナーゼである c-kit を標的とする.この薬剤は,血小板由来の増殖因子受容体または c-kit を発現する他の腫瘍の治療にも有効かもしれない.
    メシル酸イマチニブは,明らかにされた腫瘍発現の経路を標的とする能力の高い抗癌剤である.

HEALTH POLICY REPORT

  • Health Policy Report:被験者の保護 ― ジョンズ・ホプキンスにおける重大局面
    Health Policy Report: Protecting Research Subjects ― The Crisis at Johns Hopkins

    2001 年 6 月,ジョンズ・ホプキンス喘息・アレルギーセンター(Johns Hopkins Asthma and Allergy Center)の健康な若い技師である Ellen Roche が,喘息の治験参加中に死亡した.この悲劇は,ジョーンズ・ホプキンスにおける研究事故に関する複数の集中的な調査を促し,この施設のすべての政府支援研究プロジェクトが一時中止されるにいたった.“Health Policy Report”では,Steinbrook が,調査の結果,ジョンズ・ホプキンスの反応,およびすべての臨床研究関係者へのより広範な教訓を詳細に検討している.