乳房の乳管上皮内癌の局所管理に対する病変辺縁の切除幅の影響
The Influence of Margin Width on Local Control of Ductal Carcinoma in Situ of the Breast
M.J. SILVERSTEIN AND OTHERS
乳管上皮内癌は,完全に切除されれば再発することはないだろうと考えられている非浸潤癌である.それゆえ,切除病理標本の癌病変の境界から断端部までの距離,すなわち病変辺縁切除幅が,局所再発の重要な決定因子かもしれないと考えられている.
患者あるいは主治医の選択によって,術後の放射線療法を伴うあるいは伴わない乳房温存術の治療を受けた患者から切除された 469 例の乳管上皮内癌の病理標本を対象として,直接測定または接眼マイクロメータによって測定した病変辺縁切除幅と,核の異型度,面皰壊死,および腫瘍の大きさについて標準化された方法で評価を行った.そして,この評価の結果を,病変辺縁切除幅と患者が術後放射線療法を受けたかどうかということに関連させて分析した.
8 年目までの再発の平均(±SE)推定確率は,切除した病変の全方向の病変辺縁切除幅が 10 mm 以上であった 133 例の患者では 0.04±0.02 であった.これらの患者では,術後放射線療法からの有益性は何も認められなかった.また,病変辺縁切除幅が 1~<10 mm であった患者においても,術後放射線療法の統計学的に有意な有益性は認められなかった.これに対して,病変辺縁切除幅が 1 mm 未満の患者では,照射による統計学的に有意な有益性が認められた.
病変周辺の切除幅を 10 mm 以上とって切除された乳管上皮内癌の患者においては,術後の放射線療法によって再発率は低下しなかった.しかし,病変辺縁切除幅が 1 mm 未満の患者に対しては,術後の放射線療法が有益である可能性がある.