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May 13, 1999 Vol. 340 No. 19

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腎臓移植後のサイトメガロウイルス感染症の予防におけるバラシクロビル
Valacyclovir for the Prevention of Cytomegalovirus Disease after Renal Transplantation

D. LOWANCE AND OTHERS

背景

サイトメガロウイルス(CMV)感染症は,臓器移植の重大な合併症である.そこで,われわれは,バラシクロビルによる予防治療が CMV 感染症のリスクを低下させるのではないかという仮説をたてた.

方 法

全体で,CMV 血清抗体陽性ドナーから腎臓を提供された CMV 陰性レシピエントの 208 例と,CVM 陽性レシピエントの 408 例を,バラシクロビルの 2 g またはプラセボ 1 日 4 回の移植後 90 日間にわたる連日経口投与に無作為に割り付けた.なお,用量は腎機能によって調節された.主要エンドポイントは,移植後 6 ヵ月間に臨床検査で確認された CMV 感染症であった.

結 果

バラシクロビルの治療は,血清抗体陰性患者(p<0.001)と血清抗体陽性患者(p=0.03)のどちらにおいても,CMV 感染症の発症率を低下させるか,あるいは発症を遅延させた.血清抗体陰性患者について,移植後 90 日目までの CMV 感染症の発症率は,プラセボ投与のレシピエントでは 45%であったが,バラシクロビル投与のレシピエントでは 3%であった.血清抗体陽性患者については,これらの各値は 6%および 0%であった.6 ヵ月目での CMV 感染症の発症率は,プラセボ投与の血清陰性レシピエントでは 45%であったが,バラシクロビル投与の血清陰性レシピエントでは 16%であった;この発症率は,プラセボ投与の血清陽性レシピエントでは 6%,バラシクロビル投与の血清陽性レシピエントでは 1%であった.移植後 6 ヵ月目での生検で確認された移植片の急性拒絶反応の割合は,血清抗体陰性群では,プラセボ投与のレシピエントが 52%,バラシクロビル投与のレシピエントが 26%であった(p=0.001).また,バラシクロビルの治療は,CMV のウイルス血症とウイルス尿症,単純ヘルペスウイルス感染症の発生率を低下させ,そして入院による医療資源の使用も減少させた.バラシクロビルの治療では幻覚と錯乱の発現が多かったが,これらの事象は重症のものではなかったし,治療の継続を制限するものではなかった.他の有害事象の発現率は投与群間で同程度であった.

結 論

バラシクロビルによる予防治療は,腎臓移植後の CMV 感染症を予防するための安全かつ有効な治療法である.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 340 : 1462 - 70. )