アネルギー性の組織不適合骨髄同種移植片の移植
Transplantation of Anergic Histoincompatible Bone Marrow Allografts
E.C. GUINAN AND OTHERS
同種骨髄移植の成否は,全身的な免疫抑制あるいは T 細胞の除去にかかっている.これとは対照的に,アネルギー(免疫不応)を誘発させることによって,ドナーから提供された骨髄中のある特定の同種反応性 T 細胞を不活化させることができる.これまでの研究から,アネルギーは,抗原発現細胞表面の B7 分子と T 細胞表面の CD 28 分子との相互作用を阻止することによって誘発され,それによって T 細胞の活性化に不可欠な重要な信号化のイベントが妨げられるということが示されている.そこで,われわれは,組織不適合骨髄移植という場面でこの治療法の実用可能性を検討するために,ex vivo で,ドナーの骨髄中の T 細胞にレシピエントのアロ抗原に対するアネルギーを誘発させる臨床試験を実施した.
12 例の移植レシピエントの転帰を評価した.レシピエントの末梢血のリンパ球を骨髄抑制前に採取し,これをアロ抗原発現細胞として用いた.アロ抗原に特異的なアネルギーを誘発させるために,レシピエントと HLA ハプロタイプの 1 組が一致していないドナーから提供された骨髄を,照射処理したレシピエントの細胞と一緒に,B7:CD28 を介した刺激の阻害物質の一つである CTLA-4–Ig を添加して 36 時間培養した.レシピエントには,通常の骨髄抑制と免疫予防療法を行った後に,処理したドナーの骨髄細胞を移植した.
アネルギーの誘発後に,ドナーの骨髄に残っていたレシピエントのアロ抗原を認識可能な T 細胞の割合は急激に低下したが(p<0.001),レシピエントやドナーの非血縁者由来のアロ抗原に対する反応性には変化はなかった(p=0.51).評価が可能であった 11 例の患者では,ハプロタイプが同一の骨髄細胞が生着していた.これら 11 例の患者の 3 例に,胃腸管に限局した急性の移植片対宿主病(GVHD)が発現した.しかしながら,GVHD に起因した死亡例は 1 例もいなかった.移植を受けた 12 例の患者のうちの 5 例が生存し,移植後 4.5~29 ヵ月間にわたって寛解が続いていた.
レシピエント由来のアロ抗原に対するアネルギーを誘発させるための処理を ex vivo で行ったドナーの骨髄は,GVHD のリスクが比較的小さな状態で,in vivo での造血を回復させることができる.