HIV-1 弱毒変異株感染後 14~18 年の時点での免疫学的およびウイルス学的状態 ― シドニー血液バンクコホートの報告
Immunologic and Virologic Status after 14 to 18 Years of Infection with an Attenuated Strain of HIV-1 — A Report from a Bank Cohort
J.C. LEARMONT AND OTHERS
シドニー血液バンクコホート(Sydney Blood Bank Cohort)は,1985 年より前に,ヒト免疫不全ウイルス 1 型(HIV-1)の nef 遺伝子と末端反復配列(LTR)とが重複している領域に欠損のある株に感染した供血者の 1 例と,輸血レシピエントの 8 例から成る.レシピエントの 2 例は,HIV 感染症に関連しない原因により,1994 年以降にそれぞれ 77 歳,83 歳で死亡した;もう 1 例のレシピエントは,全身性エリテマトーデス(SLE)に罹患していたが,おそらく HIV に関連すると考えられる原因によって,1987 年に 22 歳で死亡した.
今回,われわれは,このコホートの生存者 6 例と死亡者 1 例の,免疫学およびウイルス学に関する 1998 年 9 月 30 日までの縦断的データを報告する.
生存レシピエントの 5 例は,HIV-1 感染後 14~18 年間,抗レトロウイルス療法を受けることなく無症状のままであったが,供血者は 1999 年 2 月に治療を開始した.レシピエントの 3 例は,血漿中 HIV-1 RNA 量が検出限界以下で(<200 コピー/mL),このうちの 2 例は,CD4 リンパ球数が年間それぞれ 9/mm3,30/mm3 の割合で減少していた(それぞれ,p=0.3,p=0.5).供血者と残りの 2 例のレシピエントは,血漿中 HIV-1 RNA 量が中央値で 645~2,850 コピー/mL であった;供血者では RNA 量が増加していた(p<0.001).これらの 3 例では,CD4 リンパ球数は年間 16~73/mm3 の割合で減少していた(p<0.001).感染から 12 年後に死亡したレシピエントは,血漿中 HIV-1 RNA 量が中央値で 1,400 コピー/mL で,CD4 リンパ球数は年間 17/mm3 の割合で減少していた(p=0.2).
今回報告した HIV-1 弱毒変異株による持続感染の後に,血漿中 HIV-1 RNA が検出可能であった 4 例のうち,3 例に免疫学的障害を示す所見が認められた.CD4 リンパ球数は,血漿中 HIV-1 RNA が検出不能のままである 3 例では,安定しているように思われる.