神経芽細胞腫の患者における17 番染色体長腕(17q)のゲインと有害転帰
Gain of Chromosome Arm 17q and Adverse Outcome in Patients with Neuroblastoma
N. BOWN AND OTHERS
17 番染色体の長腕(17q)からの遺伝物質のゲイン(17q21–qter の部分ゲイン)は,神経芽細胞腫にもっとも多くみられる細胞遺伝学上の異常である.このゲインは,進行した腫瘍,1 歳以上の患者,1 番染色体の短腕(1p)の欠失,および N-myc 癌遺伝子の増幅に関連しており,これらのすべてが有害転帰を予測するものである.そこで,われわれは,これらの関連を検討するとともに,予後に対する 17 番染色体の状態の重要性について評価した.
欧州の六つのセンターで 313 例の患者の原発性神経芽細胞腫に対して行われた 17 番染色体の分子細胞遺伝学的分析を集積した.臨床および生存に関する情報を,1p,N-myc,および倍数性のデータとともに収集した.
染色体の一部,17q21–qter の非相同的なゲインがこの腫瘍の 53.7%に認められたが,46.3%では染色体は正常であった.この 17q のゲインは,進行した腫瘍であるということと 1 歳以上の小児の腫瘍であるということが特徴で,1p の欠失と N-myc の増幅に強く関連していた.1p の欠失あるいは 17q のゲインが認められなかった腫瘍には,N-myc の増幅も認められなかった.17q のゲインは,単変量解析では,有害転帰の有意な予測因子であった.全体の 5 年生存率は,この異常をもった患者では 30.6%(95%信頼区間,21~40%)であったのに対して,17q の状態が正常な患者では 86.0%であった(95%信頼区間,78~91%).多変量解析でも,17q のゲインがもっとも強力な予後因子であり,これに次ぐ予後因子は病期 IV の腫瘍と 1p の欠失であった(ハザード比,それぞれ 3.4,2.3,1.9).
染色体の一部分,17q21–qter の部分ゲインは,神経芽細胞腫の小児における重要な予後因子である.