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July 2, 2009 Vol. 361 No. 1

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1 型糖尿病における腎症・網膜症に対するエナラプリルとロサルタンの有効性
Renal and Retinal Effects of Enalapril and Losartan in Type 1 Diabetes

M. Mauer and Others

背景

腎症と網膜症は依然として 1 型糖尿病の重大な合併症であるが,レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬の早期投与により,それらの進行が抑制されるかどうかは明らかでない.

方 法

血圧と尿中アルブミン排泄率が正常な 1 型糖尿病患者 285 例を対象に,多施設共同比較試験を実施した.患者を,ロサルタン(100 mg/日)群,エナラプリル(20 mg/日)群,プラセボ群のいずれかに無作為に割り付け,5 年間追跡した.主要エンドポイントは,腎生検標本上で,糸球体中にメサンギウムが占める容積比率の変化とした.網膜症に関するエンドポイントは,網膜症重症度スケールで 2 段階以上進行することとした.線形回帰モデルおよびロジスティック回帰モデルを用いて,intention-to-treat 解析を行った.

結 果

腎生検,網膜症についての完全なデータが得られた患者は,それぞれ 90%,88%であった.糸球体中のメサンギウム容積比率の 5 年間の変化には,プラセボ群(0.016 単位)と,エナラプリル群(0.005 単位,P=0.38),ロサルタン群(0.026 単位,P=0.26)とのあいだで有意差は認められなかった.そのほか,生検で評価した腎臓の構造的変化に関する変数にも,有意な治療効果は認められなかった.微量アルブミン尿の 5 年間の累積発現率は,プラセボ群 6%に対し,ロサルタン群では 17%と高かったが(log-rank 検定による P=0.01),エナラプリル群では 4%と高くはなかった(log-rank 検定による P=0.96).網膜症が 2 段階以上進行するオッズは,プラセボ群と比較して,エナラプリル群では 65%低下し(オッズ比 0.35,95%信頼区間 [CI] 0.14~0.85),ロサルタン群でも 70%低下した(オッズ比 0.30,95% CI 0.12~0.73).これらの低下はいずれも血圧の変化とは独立していた.生検に関連する重篤な有害事象は 3 件みられたが,完全に消失した.慢性の咳嗽がエナラプリル群 12 例,ロサルタン群 6 例,プラセボ群 4 例にみられた.

結 論

1 型糖尿病患者において,RA 系の早期阻害により腎症の進行は抑制されなかったが,網膜症の進行は抑制された.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00143949)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2009; 361 : 40 - 51. )