不安定狭心症に対するアスピリン+チロフィバンとアスピリン+ヘパリンとの比較
A COMPARISON OF ASPIRIN PLUS TIROFIBAN WITH ASPIRIN PLUS HEPARIN FOR UNSTABLE ANGINA
PRISM STUDY INVESTIGATORS
血小板の活性化は,不安定狭心症の病態生理にとって最重要である.われわれは,非ペプチド性糖蛋白 IIb/IIIa 受容体拮抗薬であるチロフィバンによる血小板凝集の最終共通経路の阻害が,この疾患における臨床転帰を改善するか否かを調べた.
二重盲検試験において,すでにアスピリンを投与している患者 3,232 人を無作為割付けして,チロフィバンまたはヘパリンの 48 時間静脈内注入によるさらなる治療を行った.主要エンドポイントは,48 時間の時点での死亡,心筋梗塞,難治性虚血の複合とした.
複合エンドポイントの発生率は,48 時間の時点でチロフィバン投与群のほうが 32%低かった(3.8% 対 ヘパリン群の 5.6%;リスク比,0.67;95%信頼区間,0.48~0.92;p = 0.01).経皮的血行再建術は最初の 48 時間に患者の 1.9%に施行された.30 日の時点で,複合エンドポイント(不安定狭心症による再入院を追加)の発生率は,2 群で同程度であった(チロフィバン群で 15.9% 対 ヘパリン群で 17.1%,p = 0.34).チロフィバン群では,死亡または心筋梗塞の発生率に減少傾向を認め(5.8% 対 ヘパリン群では 7.1%;リスク比,0.80;95%信頼区間,0.61~1.05;p = 0.11),死亡率はチロフィバン群の 2.3%に対し,ヘパリン群では 3.6%(p = 0.02)であった.大出血は両群の患者の 0.4%に発生した.チロフィバン群ではヘパリン群より可逆性の血小板減少症の発生率が高かった(1.1% 対 0.4%,p = 0.04).
チロフィバンは概して忍容性に優れ,ヘパリンと比べて 48 時間の注入期間中の虚血を減少させ,その間血行再建術は施行されなかった.難治性虚血と心筋梗塞の発生率は 30 日の時点では減少しなかったが,チロフィバン投与群の患者では死亡率は低かった.アスピリン+チロフィバンによる血小板阻害は,不安定狭心症の管理に何らかの役割を果たす可能性がある.