慢性疾患を有する患者の非関連疾患に対する治療
THE TREATMENT OF UNRELATED DISORDERS IN PATIENTS WITH CHRONIC MEDICAL DISEASES
D.A. REDELMEIER, S.H. TAN, AND G.L. BOOTH
患者は同時に複数の疾患を有する場合があるが,一つの問題に注意が注がれると,ほかは蔑ろにされる可能性がある.皆保険が提供されているカナダ・オンタリオ州において,慢性疾患を有する患者では非関連疾患が治療される可能性が低いかどうかを明らかにするために,住民ベースの分析を行った.
1995 年に,65 歳以上の,オンタリオ州薬剤給付プログラムの一部として無料で処方薬治療を受ける資格を有するオンタリオ州住民 1,344,145 人を調査した.慢性疾患を有する患者の同定は,糖尿病はインスリンの処方,肺気腫は臭化イプラトロピウムの処方,精神病症候群はハロペリドールの処方に基づいて行った.各慢性疾患について,「非関連」の治療を選択した:糖尿病患者ではエストロゲン補充療法,肺気腫患者では脂質低下薬,精神病症候群患者では関節炎の内科治療.
糖尿病患者 30,669 人は,ほかの被験者よりもエストロゲン補充療法を受けることが少なかった(2.4% 対 5.9%,p<0.001).糖尿病は,エストロゲン治療のオッズの 60%減少に関連した(オッズ比,0.40;95%信頼区間,0.37~0.43).肺気腫患者 56,779 人,精神病症候群患者 17,336 人についても同様の結果が得られ,肺気腫患者は脂質低下薬を投与される可能性が低く(オッズ比,0.69;95%信頼区間,0.67~0.72;p<0.001),精神病症候群患者は関節炎の内科治療を受ける可能性が低かった(オッズ比,0.59;95%信頼区間,0.57~0.62;p<0.001).
慢性内科疾患を有し,無料で処方薬治療を受けている 65 歳以上の患者では,非関連疾患は治療されていない.慢性疾患患者を治療する臨床医は,他の疾患にも注意を払い,その治療機会を逸する回数を最小限にすべきである.