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May 28, 1998 Vol. 338 No. 22

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クリソタイルアスベストへの非職業曝露と肺癌のリスク
NONOCCUPATIONAL EXPOSURE TO CHRYSOTILE ASBESTOS AND THE RISK OF LUNG CANCER

M. CAMUS, J. SIEMIATYCKI, AND B. MEEK

背景

アスベストへの多量の産業曝露は,肺癌および中皮腫を引き起すが,アスベストへの曝露量がはるかに少ない環境曝露も同様に,これらの癌を引き起すか否かは今なおわかっていない.にもかかわらず,環境保護局(EPA)を含めた規制当局は,過去のアスベストへの産業曝露からの既知のリスクを,今日のはるかに低いアスベスト環境濃度(おおよそ 100,000 倍低い)へ外挿することによって,肺癌のリスクを評価した.われわれも同様に,アスベストへの非職業的曝露量が比較的多い女性集団においてアスベスト誘発肺癌のリスクを予測する EPA のモデルを調査した.

方 法

ケベック州のクリソタイル・アベスト鉱山地域 2 ヵ所での女性の死亡率を,対照地域 60 ヵ所の女性の死亡率と比較し,年齢標準死亡率を得た.専門家委員会の助けを借りて,鉱山地域の女性におけるアスベストへの過去の曝露を推定し,これらのデータを EPA のモデルに用いて肺癌の相対リスクを予測した.次に,この予測値を観察された死亡率と比較した.

結 果

アススト鉱山地域における推定曝露に基づき,肺癌による死亡の相対リスクは,EPA モデルによって,2.1 と予測され,この集団での肺癌による死亡が約 75 人の増加となる.対照的に,われわれの計算では,標準死亡率は 1.0 および標準比例死亡率は 1.1(p>0.05)となり,アスベストに非職業曝露している女性では肺癌による死亡が 0~6.5 例多かったことを示唆している.胸膜癌による死亡 7 例を認めた(相対リスク,7.63;p<0.05).

結 論

われわれは,クリソタイルアスベスト鉱山地域 2 ヵ所の女性に,肺癌による死亡に関して測定可能な過度の死亡のリスクを認めなかった.EPA のモデルは,アスベスト誘発肺癌のリスクを少なくとも 10 倍過大評価した.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1998; 338 : 1565 - 71. )