January 15, 1998 Vol. 338 No. 3
腎移植における急性拒絶反応予防にのためのダクリズマブによるインターロイキン-2 受容体遮断
INTERLEUKIN-2–RECEPTOR BLOCKADE WITH DACLIZUMAB TO PREVENT ACUTE REJECTION IN RENAL TRANSPLANTATION
F. VINCENTI AND OTHERS
アロ抗原反応性 T リンパ球上に発現される高親和性インターロイキン-2 受容体を遮断するモノクローナル抗体は,選択的に免疫を抑制する可能性がある.ダクリズマブは,インターロイキン-2 受容体の α 鎖に特異的に結合する遺伝子操作によるヒト IgG1 モノクローナル抗体であり,このため,腎移植後拒絶反応のリスクを低下させる可能性がある.
われわれは,まず,死体腎移植を行い,シクロスポリン,アザチオプリン,およびプレドニゾンによる免疫抑制療法を行った患者 260 人に対し,ダクリズマブ(1.0 mg/kg 体重)またはプラセボを移植前に静脈内注射し,その後 2 週間ごとに 1 回,計 5 回投与した.患者を一定の間隔で 12 ヵ月間追跡調査した.第一義的エンドポイントは,生検により確認した移植後 6 ヵ月以内の急性拒絶反応の発生であった.
ダクリズマブ投与患者 126 人中,28 人(22%)が生検により確認した急性拒絶反応を示したのに対し,プラセボを投与した患者では 134 人中 47 人(35%)であった(p = 0.03).12 ヵ月での移植片生着は,ダクリズマブ治療患者では 95%であったのに対し,プラセボ投与患者では 90%であった(p = 0.08).ダクリズマブ投与患者は,薬物に対する副作用を何ら示さず,6 ヵ月では感染性合併症または癌に関して 2 群で有意差を示さなかった.ダクリズマブの血清半減期は 20 日で,この投与により,循環中のリンパ球上のインターロイキン-2α 受容体の飽和が延長した.
ダクリズマブは腎移植レシピエントの急性拒絶反応の発生率を低下させる.