March 19, 1998 Vol. 338 No. 12
胎児アロ免疫性貧血における抗 Kell 抗体による赤芽球系前駆細胞の阻害
INHIBITION OF ERYTHROID PROGENITOR CELLS BY ANTI-KELL ANTIBODIES IN FETAL ALLOIMMUNE ANEMIA
J.I. VAUGHAN AND OTHERS
新生児のアロ免疫性貧血では,Kell 式血液型抗原に対する抗体の存在によって生じる溶血の程度は,Rh 式血液型の D 抗原に対する抗体によって生じる程度より低く,新生児の循環中の網赤血球と正染性赤芽球の数は,貧血の程度に対して不適当に低い.これらの知見は,Kell 抗原に対する感作の結果,溶血とともに胎児赤血球形成の抑制が起ることを示唆している.
ヒトモノクローナル抗 Kell 抗体および抗 D 抗体,そして抗 Kell抗体を有する女性の血清の存在下で,臍帯血からの Kell 陽性および Kell 陰性の造血前駆細胞の in vitro 増殖を比較した.
臍帯血からの Kell 陽性赤芽球系前駆細胞(赤芽球バースト形成ユニット [BFU-E] および赤芽球コロニー形成ユニット [CFU-E])の増殖は,モノクローナル IgG および IgM 抗 Kell 抗体によって用量依存的に(濃度範囲,0.2~20%)著しく阻害されたが,モノクローナル抗 D 抗体は影響を与えなかった.Kell 陰性臍帯血からのこれらのタイプの細胞の増殖は,いずれのタイプの抗体によっても影響を受けなかった.モノクローナル抗 Kell 抗体もモノクローナル抗 D 抗体のいずれも,臍帯血からの顆粒球または巨核球前駆細胞の増殖を阻害しなかった.抗 Kell 抗体を有する女性 22 人の血清は,Kell 陽性 BFU-E および CFU-E の増殖を阻害したが,Kell 陰性 BFU-E および CFU-E の増殖は阻害しなかった(群間の差について p < 0.001).母体の抗 Kell 抗体は,臍帯血からの顆粒球 マクロファージまたは巨核球前駆細胞に阻害作用を示さなかった.
抗 Kell 抗体は,Kell 陽性 BFU-E および CFU-E の増殖を特異的に阻害し,この知見は,これらの抗体が前駆細胞レベルでの赤血球形成を抑制することによって胎児貧血を引き起すという仮説を支持する.