December 17, 1998 Vol. 339 No. 25
ギラン–バレー症候群と 1992~93 年および 1993~94 年のインフルエンザワクチン
THE GUILLAIN–BARRÉ SYNDROME AND THE 1992–1993 AND 1993–1994 INFLUENZA VACCINES
T. LASKY AND OTHERS
米国のワクチン副反応報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System)に提出されたインフルエンザワクチンに関連したギラン–バレー症候群に関する報告書の数は,1992~93 年には 37 件であったのが,1993~94 年には 74 件に増加し,ワクチンに関連したリスクが上昇している可能性についての懸念がでてきている.
1992~93 年および 1993~94 年のインフルエンザの予防接種の季節にギラン–バレー症候群と診断された患者を,四つの州の退院に関するデータベースから選び出した.予防接種の記録については,1995~96 年に実施した電話による聞き取り調査によって入手し,ワクチンの供給者に確認をとった.予防接種後 6 週間以内に発病したギラン–バレー症候群をワクチンに関連したものと定義した.母集団のワクチンの接種率は,無作為番号のダイアルによる電話調査で評価した.
ギラン–バレー症候群を発病した 273 人の成人患者のうち 180 人に聞き取り調査を行った;15 人は調査への参加を辞退し,残りの 78 人には連絡がとれなかった.ワクチン供給者によって,19 人の患者が,ギラン–バレー症候群の発病の 6 週間前までにインフルエンザの予防接種を受けていたことが確認された.年齢,性別,およびワクチンの季節で補正した予防接種に関連したギラン–バレー症候群の相対リスクは,1.7(95%信頼区間,1.0~2.8;p = 0.04)であった.補正後の相対リスクは,1992~93 年の季節が 2.0(95%信頼区間,1.0~4.3),1993~94 年の季節が 1.5(95%信頼区間,0.8~2.9)であった.ワクチンに関連したギラン–バレー症候群の症例 19 例中 9 例は,予防接種の 2 週目に発病し,その全例が接種後 9 日目から 12 日目までに発病していた.
ワクチンに関連したギラン–バレー症候群のリスクは,1992~93 年と 1993~94 年のあいだでは上昇していなかった.この二つの季節を合わせた補正相対リスクは 1.7 であったが,この値は,インフルエンザの予防接種を受けた時のギラン–バレー症候群の患者の増加が,100 万人当たりにつき 1 人をわずかに超える程度であることを示している.