若い運動選手における肥大型心筋症のスクリーニング
SCREENING FOR HYPERTROPHIC CARDIOMYOPATHY IN YOUNG ATHLETES
D. CORRADO, C. BASSO, M. SCHIAVON, AND G. THIENE
イタリアでは 20 年以上のあいだ,競技スポーツに参加する前に若い運動選手のスクリーニングを行っている.われわれは,このような手順の成果として,若い運動選手における一般的な心血管性死因である肥大型心筋症による突然死が予防されるか否かを評価した.
1979~96 年にかけて,イタリアのヴェネト州において,運動選手および運動選手でない人(35 歳以下)のあいだでの突然死をプロスペクティブに調査した.両集団における突然死の原因を比較し,運動選手における病理学的所見を病歴および心電図と関連させた.同じ期間にイタリアのパドバにおいて参加前スクリーニングを受けた一連の若い運動選手 33,735 人において,スポーツに参加不適格とされた心血管に起因する理由を調べ,追跡調査を行った.
若年者における突然死 269 例のうち,競技選手に起ったのは 49 例(男性の運動選手 44 人および女性 5 人;平均 [±SD] 年齢,23±7 歳)であった.運動選手における突然死のもっとも一般的な原因は,不整脈を起す右心室心筋症(22.4%),冠動脈のアテローム性動脈硬化症(18.4%),および冠動脈起始部の先天異常(12.2%)であった.肥大型心筋症は運動選手では突然死 1 例(2.0%)を引き起したにすぎないが,運動選手でない人では突然死 16 例(7.3%)を引き起した.肥大型心筋症は,参加前スクリーニングにおいて運動選手 22 人(0.07%)に検出され,不適格とされた心血管に起因する理由の 3.5%を占めた.肥大型心筋症の不適格運動選手のうち,8.2±5 年の平均追跡調査期間中での死亡例は皆無であった.
結果は,肥大型心筋症がこれらの若い競技運動選手のまれな死因であることを示しており,競技スポーツの参加前のスクリーニングでの罹患運動選手の特定および参加資格の取消しは,突然死を予防する可能性があることを示唆している.