小児癌生存者の子孫における癌のリスク
RISK OF CANCER AMONG OFFSPRING OF CHILDHOOD-CANCER SURVIVORS
R. SANKILA AND OTHERS
小児癌の生存者は増えており,生殖年齢に達している.しかし,小児癌・思春期癌の生存者の子孫における癌(網膜芽細胞腫以外)のリスクは明らかにされていない.
デンマーク,フィンランド,アイスランド,ノルウェー,スウェーデンにおいて,全国癌登録・出生登録のデータを用いて,1940 年代・1950 年代以降に小児癌または思春期癌と診断された生存者 14,652 人の子孫 5,847 人における癌のリスクを評価した.癌の診断に関して子孫を 86,780 人年追跡し,標準化発生比を計算した.
子孫 5,847 人中,悪性新生物は 44 例で診断された(標準化発生比,2.6;95%信頼区間,1.9~3.5).網膜芽細胞腫は 17 例で,標準化発生比は 37 であった.網膜芽細胞腫以外の新生物は 27 例であった(標準化発生比,1.6;95%信頼区間,1.1~2.4).子孫では,これに次いで頻度の高かった癌の原発部位は脳神経系で,8 例認められた(標準化発生比,2.0;95%信頼区間,0.9~3.9).子孫における,その他の原発部位の明らかに散発性の癌症例は 0~4 例あった.遺伝性癌と思われる 4 例と,遺伝性網膜芽細胞腫の子孫における続発癌 2 例を除くと,散発性癌は 22 例であり,標準化発生比は 1.3 であった(95%信頼区間,0.8~2.0).
小児癌生存者の子孫では,非遺伝性癌のリスクが有意に高いというエビデンスはない.