免疫抑制患者からのリンパ腫におけるエプスタイン–バーウイルスと細胞シグナル伝達経路
EPSTEIN–BARR VIRUS AND A CELLULAR SIGNALING PATHWAY IN LYMPHOMAS FROM IMMUNOSUPPRESSED PATIENTS
D. LIEBOWITZ
エプスタイン–バーウイルス(EBV)は,さまざまな悪性および良性リンパ増殖性疾患に関連する.これはまた,in vitro でヒト B リンパ球を効率的にトランスフォームさせる.EBV 感染細胞の潜在膜蛋白 1(LMP1) は,腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーのメンバーに類似し,それによって細胞質 TNF 受容体関連因子(TRAFs)を通じて細胞膜から核へ増殖シグナルを伝達することによって,この過程において重要な役割を果たす.わたしは,移植後リンパ増殖性疾患患者と,後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連した非ホジキンリンパ腫患者からの腫瘍組織における,TRAFs を通じての LMP1 媒介シグナル伝達の証拠を求めた.
腫瘍組織における LMP1 と TRAF-1 または TRAF-3 の関連を,二重免疫螢光顕微鏡と免疫沈降反応アッセイによって調べた.LMP1–TRAF シグナル伝達の証拠は,核因子κB(NF-κB)転写因子に関する電気泳動移動度シフトによって 求めた.
移植後リンパ増殖性疾患患者 8 人,AIDS 関連非ホジキンリンパ腫患者 2 人,そして風土病バーキットリンパ腫患者 3 人からの腫瘍を分析した.移植後リンパ増殖性疾患患者 6 人からの腫瘍は EBV 陽性で,LMP1 を発現していた;二つのサンプルが EBV 陰性であった.AIDS 関連非ホジキンリンパ腫の患者 2 人からの腫瘍はいずれも EBV 陽性で LMP1 を発現していたが,バーキット腫瘍患者 3 人全員の腫瘍は EBV 陽性であったがしかし,LMP1 は陰性であった.二重免疫螢光顕微鏡により,LMP1 は,EBV 陽性 LMP1 陽性サンプル 8 例すべてにおいて TRAF-1 と TRAF-3 とともに局在し,免疫沈降されたことが示された.電気泳動移動度シフトアッセイにより,EBV 陽性 LMP1 陽性サンプル 8 例すべてにおいて,活性化 NF-κB が示されたが,EBV 陰性 LMP1 陰性サンプルまたは EBV 陽性 LMP1 陰性サンプル 3 例では示されなかった.
TRAF システムを通じての LMP-1 媒介シグナル伝達は,免疫抑制患者に発症する EBV 陽性リンパ腫の発病に役割を果たしている.